07
「ところで力河さん」 「なんだ、紫苑」 「シェフとかマスターとか、もう雇ってあるんですか?」 「おお紫苑、よく聞いてくれた。実はな、肝心の料理人がいないんだ」 「…え?」 料理人がいない? 「そうだ、残念ながら料理人の筋の知り合いはいなくてな…。菓子パンあたりは火藍の店のを仕入れようと思ってるんだが」 はは、と力河は情けなく笑う。 「……します」 「あ?」 「力河さん、ぼくがします」
料理は得意な方だ。火藍の菓子作りを見てきたおかげもあり、勘は悪くない。調べて、練習して、研究すればなんとかなるはずだ。もともと研究者志望だったのだし、研究は苦にならない。むしろ楽しめる。
「ぼくがマスターになってみます。やらせてください、力河さん。使えなかったらすぐにクビにしていただいてかまいません」
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