04
長く器用な指が効率よく動き短時間で洗髪を終え、トリートメントを馴染ませ、タオルである程度の水気を取る。
「イヌカシ」 「あ?」 「タオルで髪乾かす時には、ごしごしこすったらだめだからね」 「は?おれ、タオルで髪乾かさねぇよ。普段は自然乾燥万歳だ」 「でもさっきタオルで…」 「ああ、心優しいおれは服濡れないように今日だけ気を遣ってタオル使ったの。ま、ちょうど置いてあったしな。で、なんでこすっちゃだめなんだ?」 「キューティクルが剥がれちゃうんだよ。毛髪は鱗みたいにキューティクルで被われていて──」 「キューティーハニー?」 「え?それこそ何?キューティクルだよ」 「犬たちが運ぶ荷物に入ってた気がする。昔の…えっと、なんだ、アニメーション…うん、DVDだった」 「へぇ。No.6で芸術鑑賞は奨励されなかったから、そのあたりは全然知らないんだ。古典はネズミに仕込まれたけど」
紫苑はハサミを取り出す。 「イヌカシ、5cmくらいなら切ってもいいかな」 「好きにしたら?刈り上げられるのは勘弁だけど」 「手元滑ったら…まぁ許してね」 「じょ、冗談」
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