04


客は言葉通り、時々パンの差し入れを持って来た。

「あのパン屋はいいな」

ある時、そんな話をし出した。

「私が常連になると、サービスをつけてくれる。ロストタウンにはなかなか珍しい店だ」
「ふうん」
「イヴの兄貴も見たぞ。店の手伝いも少ししているようだ。きちんと挨拶もできるし感じのいい少年だった」

ネズミは火藍のパンをかじった。
おいしい。

「兄貴、元気そうにしてた?」
「ああ、元気そうだった。おまえたち、あんまり似てないんだな」
「そう?母親似だからかな」
「顔の造作じゃなくて、雰囲気がな。やはり育つ環境が違うからか」
「兄貴は昔から、天然だったよ」

そうかそうかと笑いながら、客もパンを食べた。


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