05
そして、ある夕方、大学でのレッスンからの帰り道。 「ランペルージ君!」 後ろから声をかけられた。誰かと振り向けば、満面の笑みの枢木がいた。逆にこちらはしかめっ面になる。
「あ、やっと振り向いてくれた。さっきから呼んでたんだけど」 「…すみません、考え事をしていて…」 「今レッスン帰り?何か注意されたの?」
悔しいが、図星だ。
「音量と迫力が足りない、と…。俺は精一杯努力しているつもりだし、先生のおっしゃるよう姿勢も気をつけてるのですが…」 「ああそっか。だってルルーシュ君、細いもんね」
そんなことは分かっている!だからできるだけ食べるようにはしているが、一人暮らしの身、つい面倒くさくて食事を抜いてしまう。
…ん? 違和感を覚える。
「え、名前…」 「あれ、僕間違って呼んじゃったかな?ルルーシュ・ランペルージ君でしょ?」 「合ってますが…」
俺、枢木に名前なんて言ったか…?
俺の不審そうな顔を読んだのか、枢木は苦笑しながら言う。
「引っ越しそば配ってたじゃん、ルルーシュ君。その時に自己紹介してくれたでしょ」
そうだったか…?よく覚えてるな、こいつ。
「あ、もしかして…僕の名前知らなかったりする?」 「知ってますよ。枢木さんですよね」 「うん、そう!覚えててくれてありがとう」
馬鹿か。俺の部屋には表札掛けてないけど、向かいにはきちんと『枢木スザク』と表札が掛かっている。 いやでも覚えるだろう。
俺の渋面とは対照的に、枢木はにこにこと笑っている。
「あっ、そうだ!」 「はい?」 「引っ越しそばで思い付いた!やっぱり、君太らなきゃだめだよ。じゃないとでかい音も出ないよ。僕奢るからさ…」
気付けば、ファミレスが目の前にあった。
「一緒に夕飯食べない?ちょうど僕もお腹すいてるし!たくさん食べなよ、ルルーシュ!」
…いつの時代のナンパ手口だ… しかもさりげなく名前呼び捨てになってやがる。
もちろん俺はその誘いを断ったが、なんやかんやと言いくるめられ、結局、胡散臭い枢木と夕飯を共にすることになった。
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