太陽が落とした純白


!)現パロ
ひとりぼっちのネズミが、大晦日に紫苑宅に初めてお呼ばれするお話
火藍と紫苑とネズミ、3人で年越しするそうです。



駅の改札を出て、A2出口を探す。この駅にはたくさんの出口があり、出口を間違えるととんでもなく歩くことになるそうだ。

ネズミはこの辺りに来るのは初めてだった。A2出口を探してうろつく構内は改装工事が多く、歩きにくかった。どうやら、エレベーターを新設するらしい。作業着や警備服を着て立ち働く人々を尻目に、ネズミは長い足で悠々と歩く。心の隅でちらりと、紫苑ならご苦労様とでも思うだろうか、と考えた。

目当ての出口まで5分もかかったが、無事に地上に出る。
通りに出た瞬間に寒風が吹き付け、ネズミは寒さに首をすくませ、特殊繊維で織られたマフラーを鼻の上まで引き上げた。

紫苑から渡された手書きの地図を見ながら、しばらく大通りを歩く。思っていたほど通行人は少なくない。若いカップルや夫婦、子連れの家族が、皆一様に穏やかな顔で通りを行き交う。普段とあまり変わらない風景のように見える。だがさすがに、サラリーマンは皆無だ。切羽詰まった様子で歩く者はいない。
そのなかで、地図を片手に不確かな足取りで独り歩くネズミは、すこし周囲から浮いた存在だった。

丁寧に記された地図は見やすく、目印の曲がり角はすぐに分かった。
そこを折れ、大通りから小道に入るとまた、空気が変わった。閑散として、人がいなくなったのだ。

小道にも関わらずたくさん立ち並んだ店は、70〜30%off!!やら歳末SALE!やら、派手々々しく広告をショーウィンドーに貼り出したまま、CLOSEDの札を掲げて店を閉めていた。シャッターを下ろした店もある。
今日くらいは作業は休みらしい改装工事の足場に、小さな注連飾りが飾られていた。

大通りを走る車の音が聞こえてくるほど静かな小道に、珍しく開店している洋服店のBGMがさびしく漏れ聞こえてくる。

そんな、まるで早朝かのように息を潜ませた大晦日の道を歩いていくと、やっと目当ての建物が見えてきた。パン屋だ。ここも、見上げた商売魂で店を開けている。パンの焼ける良い匂いが漂ってくる。ああ、優しい、家庭の匂いだ。

「ネズミ!」

声がした。ネズミは顔を上げる。
パン屋の二階の窓から、紫苑が手を振っていた。

「…紫苑」
「待ってて、今降りていくよ!」

年の瀬の、冷たく澄んだ空気を溶かすような、やわらかい紫苑の声が心地よく耳に届く。
ネズミはその幸せに目を細めた。
パン屋のドアが、内側から開けられる。

「いらっしゃい」

寒さで鼻を赤くしたネズミを見て、紫苑は可笑しそうに笑ってネズミのかじかんだ手をひいた。

迎え入れられる。居心地の良い、あったかい空間へ。

店内のオレンジ色の照明を受けて、紫苑の真っ白の髪は本当に暖かそうだった。



あんたからはいつも、日向の匂いがするよ。



あけましておめでとうございます!!
昨年はお世話になりました、今年もよろしくお願いいたします!!
2013年は巳年ですね!!
この記念すべき年が、蛇の年!!
あさの先生はどこまで考えてらっしゃるのかと、ただただ感服するばかりでございます…。
今年が、皆さまにとって素敵な一年となりますよう、心からお祈りしております(・ω・´)

タイトルは、macleさまよりお借りしました。





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