夏の盛りに !)原作後捏造 ・ネズミさん帰ってきてる ・紫苑さんは再建委員会を引退 ・だから二人とも20歳くらいかな… ・二人でひっそり、西ブロックの地下室で隠居してる 冬は淘汰の季節だった。太陽は雲に隠れ、草木は枯れ、人々は餓え凍える。 しかし、夏は違った。 燦々と降り注ぐ陽光を浴びて植物は育ち、色とりどりの実をつけ、川には鱗をきらめかせて魚が泳いでいた。 夏は、命の躍動の季節だった。 夏の盛りに 「ネズミ、ネズミ、見て、これ、」 紫苑は力河にもらった瓜の実を両手いっぱいに抱えたまま、地下室に飛び込む。 空気が淀まないよう、地下室の扉は開け放してあった。都市を囲っていた壁が消え、物資が自由に流通するようになってからは、ここ西ブロックも未だ貧しいながら、治安は随分良くなっていた。 「ゴーヤだよ。夏バテに効くっていうから、力河さんにたくさん貰ってきたんだ」 「…それ、そのまま食えるのか?」 床に直接伸びていたネズミは、気だるげに視線だけを紫苑の方へ投げかける。 ネズミは暑さに弱い。昨日、二人で外に出て庭の手入れをしたのが祟ったらしく、ネズミは軽い熱中症と日焼けで臥せっていた。上気した頬と皮がはがれて赤くなった首筋が痛々しかった。抜けるように白い肌は、日光に妬かれても黒くならないかわりに赤く腫れてしまっていた。 「いや、炒めるよ。ここで料理すると熱気がこもるだろうから、外にストーブ持ち出すよ」 ばらばらと机の上にゴーヤを広げ、よく熟れているものを見繕う。 手頃なものを二つ選び、それらに刃を入れて半分に切った。スプーンで種を掻き出す。 「…悪いな」 ぼそり、と聞き取れるか聞き取れないか際どい声量で、ネズミが呟く。 「ネズミ?」 種を掻き出し終わったゴーヤを刻んでいた紫苑は、ネズミの方を振り向く。 「どうしたの、ネズミ」 ネズミはそっぽを向きながらぼそぼそと歯切れ悪く言う。 「…あんたにばっかり迷惑かけてる」 こちらからはあまり見えないネズミの頬が赤いのは、日焼けと熱中症によるものだけではない。 ネズミは、照れていた。 普段は強く凛々しいネズミのその姿に、紫苑のなかに暖かい気持ちが溢れた。 「ネズミ…」 ほかの具材を刻んでいた手を止め、おざなりに手を拭くと、紫苑はネズミに駆け寄った。 そんなことないよ!ネズミに尽くせるなんて、それこそぼくの至上の喜びなんだから…! ちょ、寄るな、暑苦しいだろ… ネズミさんが夏バテしてて、けろっとした紫苑さんが甲斐甲斐しく面倒みてたら萌えるな、と。 でも夏バテネズミとか、紫苑の理性が試されてるよね。そして紫苑さんはあっさり負けるんだろうね(ちょww back |