「せんせ、学校終わったらおれの家来てね」

今日、終業のチャイムと共にネズミは早口にそう告げると、また慌ただしげに帰っていった。





言われた通りに紫苑はネズミの家に来た。
車を横付けし、家のドアの前に立ったところで、待ちかまえていたかのようにドアが開く。
長い黒髪がふわりと頬を掠め、抱きつかれる。

「わっ、…ネ、ネズミ…?あれ、違う…?きみ、誰だい?」
「何言ってるの、先生?おれは、ネズミだぜ」

紫苑に抱きついたまま見上げてくる女装の麗人は確かにネズミと瓜二つ…だが…。

「いや、きみはネズミじゃない…」
「ふぅん、どうして」
「匂いが…ちが」

ガタン、と家の中ですごい音がする。
続いてドタバタと派手な足音がして、ネズミの怒声が響く。

「イヴ、おまえ…っ!紫苑から離れろ!」
「あ、ネズミ。なんだ、もう少し遅く来てよかったのに」

先程までネズミのふりをしていた彼は、ころりと態度を変えて笑う。
しかし、腕はしっかりと紫苑の腰に回したまま。
紫苑はといえば、二人のネズミの登場に目をぱちくりさせて固まっている。

その様子を見て、ネズミは片眉を持ち上げ、へぇと言った。

「紫苑、あんた、騙されやすいんだな。おれより、そいつがいい?」
「おやおやネズミ、早計だな」
「は?」
「こいつ、おれがネズミじゃないって気づいてたぜ。…ふふ、なかなかやるじゃん」

にやりと口端を持ち上げ、イヴは紫苑の目を覗き込む。
紫苑は後退りしようとするが、腰に回った手のせいで動けない。

「今日、うちのネズミちゃんが浮き足立ってたのは、あんたが原因?あんた、ネズミの男かなにか?」
「は…え?」
「ふぅん、まあいい。じゃっ、おれ出掛けるから、お二人さん楽しんで」

からからと笑い、イヴはひらりと手を振って玄関を出ていく。
シンプルなワンピースからすらりと伸びた足は長く、立ち去る後ろ姿も美しかった。
彼がいなくなってようやく凍結の解けた紫苑は、後ろのネズミを振り返る。

「ネ、ネズミ…今のは…」
「イヴだよ。おれの双子の兄」
「ああなるほど、双子なんだ。…って、ネズミ?なにふてくされてるんだよ」
「…べつに」

そう言いながら、ネズミはぷいとそっぽを向く。
そのまま、奥のキッチンへ歩いていく。

「あ、ネズミ、ちょっと待って」
「…上がれよ、そこにスリッパあるだろ」
「え、あ、ありがと」


ね、機嫌なおしてよ、どうしたんだよネズミ

…いちゃいちゃしてた

は?

あんた、イヴに迫られてまんざらでもなかったんだろ、おれの時はぜんっぜん、なびかなかったくせに

え、ちょ、誤解だよ

おかげで、言いそびれた…

え?

…お誕生日おめでとう、紫苑

あれ、ネズミ知ってたの?うわぁ、嬉しいな、ありがとう

誕生祝いに晩飯と…ケーキも作ったんだけど…食う?

うん、もちろん!…あれ、こんなところにクラッカーが…

わっ、それ…!返せ!

やーだ。鳴らしてくれる予定だったの?

や、違う!おれはそんなガキっぽい真似なんか…!

えー、鳴らしてよ、ほら




はっぴばーすでぃ紫苑♪
あれ?でもあんまり祝えてない気が…
でも紫苑さん上機嫌…
灰色文字の会話文のとき、紫苑はきっと頬がゆるみっぱなしのはず。
で、ネズミはツンデレ発動してたらいいと思うんだ!
それから紫苑においしくいただかれるといいよww

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