■天然は手強い
メリークリスマス!!
「何がメリークリスマスだ。呑気だな、あんたは」
「ネズミ、お祭りとか宗教は生活にあえぐ民の心の救いなんだ。君の歌にしたってそうだろう」
「心の救い、ね」
ネズミは鼻で笑いとばす。
「腹がふくれて寒さをしのげる方がよっぽど嬉しいね。歌なんて聞いて何になる。金の無駄遣いさ、馬鹿馬鹿しい。まっ、そんな酔狂なやつらが、おれの懐あたためてくれてるわけだけど」
違う、馬鹿馬鹿しくなんかない。君の歌があって、確かに救われる人がいる。たくさん、いるんだ。それって、すごいだろう。素晴らしいことじゃないか。
酔狂なんかじゃない。
「それにしても、冷えるな」
紫苑が反論しないうちに、ネズミは小さく震えて超繊維布を羽織りなおした。
それを見て、唐突に思い出す。
「あっ、ネズミ」
「ん?」
「クリスマスプレゼント!」
ふわりと、それをネズミの肩に掛けた。
「…マフラー?」
「そう、僕もお揃いのがあるんだ。あったかいでしょ」
「これはこれは陛下、わたくしめには身に余りある光栄でございます」
「あ、違う違う、力河さんに感謝してね、力河さんが買ってくれたんだ」
「まじかよ、あんたが編んでくれたんじゃないのかよ、これ」
「え?ごめん、ネズミ、手編みが良かった?力河さんがクリスマスプレゼント買ってやるって言って譲ってくれなかったからネズミとお揃いのマフラー頼んだんだけど…」
「あ、いや、紫苑、ちが…」
「うん分かった!来年は手編みのセーター探すね!」
「……」
頑張ってネズミさん!天然紫苑さんは手強いよ!どこまでも平行線ww
(12.12.07)