最近整備されたばかりの道路は、目立った凹凸もなく、乗用車よりも小さなタイヤをスムーズに滑らせた。

車体の内部からぶぶぶ、と響くエンジンの振動は、下半身を通して頭にまで伝わってくる。

最初はむず痒くなるようなそれも、しばらく乗っていれば慣れるもので、今は夜風を切る、この体が感じる寒さの方が、気になってしょうがない。

すぐ目の前にあるミリタリーコートの背中に、さらに体を寄せて、腰に回した手に力を込める。

すると、動いたことでバランスが崩れかけたのか、車体が小刻みにぶれた。



「ご、ごめんなさいっ……」

「ん、大丈夫」



慌てる私とは裏腹に、藤堂さんは落ち着いた様子でバイクの動きを修正している。

今度からは一言述べてから動いた方がいいかもしれない。

恥ずかしくなって顔を伏せると、その姿がミラーに映って見えたのか、藤堂さんが私を呼んだ。

顔を上げれば、ミラーを通して絡まる視線。



「心配すんな。お前を後ろに乗っけてる時は、安全運転心がけてるから」



な?と向けられた笑顔は、子どものように無邪気なのに、私にはとても頼れるもののように見えた。

こくん、と小さく頷き、藤堂さんの背中に額を押しあてようとした。

けれどヘルメットを被っているから、それはできずに終わる。

もどかしさを感じたけれど、このヘルメットを次に取る時は、私の家に着いた時。

後1kmもない距離が、酷く恨めしい。





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