陽が落ち始めた、冬の夕暮れ。

練習着から制服へ着替えた、誠凛バスケ部のメンバーの背中は、最後尾にいる私達よりも前方にあって。

唯一、私の隣を、長く大きな足をゆっくりと動かして歩く彼は、沈む夕日と空の濃紺に彩られていた。


夕日を受けて、キラキラと反射する土色の髪と、瞳。

今は穏やかな色を浮かべる顔は、試合の時には、凛とした雰囲気を纏い、

本気なのか、冗談なのかわからない天然をかます時の、ゆるやかな瞳は、闘志を燃やす、力強いものとなる。


普段のとぼけた人となりからは、想像もつかない、その姿。

『鉄心』と呼ばれるが由縁の気迫からはかけ離れた、今の姿。


私は、彼のそんなところに惹かれた。



「……木吉先輩、」



名前を呼ぶと、彼は前方に向けていた顔を、こちらへと向ける。

何だ?というように、小さく首を傾げる仕草や、寒さで、頬と鼻をほんの少し赤くさせた姿は、身長を190cmも超す高校生がするには、不釣り合いに思える。

けれど、なぜだか彼がしてしまえば、それが馴染んでしまうから、不思議だ。


こちらを向いたことで、影の濃くなった顔は暗い。

が、いつの時も強い意志を宿した瞳には光が射し、私の姿を捉える。






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