思春期恋愛相談


「なー、ウソップ。おれ、最近変なんだ」

釣りをしている最中、ポツリと呟かれたルフィの一言にウソップは遂にきたか…!と唾を飲み込んだ。

ルフィのウィズへの好意は仲間へのものと似ているようで全然違っていた。それはほんの些細なものから目に見えてわかるものへと日に日に変化を遂げており、感情の大きさに伴って変わってきているのだとウソップはよくよく理解している。
しかし肝心のルフィといえば己の感情を深く考えない馬鹿なやつだ。自分の行動の意味も、抱く感情も、あれ?と思ったところでまぁいっか、と済ませてしまう。
そんな彼から相談される日をウソップは今か今かと待ち望んでいた。もちろんウソップ自身で相談されるのは自分だ!と思ったわけではなく、「相談されるのは十中八九アンタよ」とナミに言われたからだ。(恐ろしい事に本人同士とウソップ、ゾロ、チョッパーのにぶちんトリオ以外は彼の感情にとっくに気づいていた)

しかしナミやロビンは年が一番近く、一緒にいる時間が長いからという理由でそう言ったに過ぎないが、ウソップにとってのその一言は何とも言えない感情を抱かせた。

そう、おれがルフィに教えてやる…!と使命感を与えてしまったのだ。

その結果…

「な、なんだー?ルフィー。おれに相談事かぁ?よし、いいだろう!このキャプテーンウソップ様に何でも聞いてみろ!!」
「どうしたんだよウソップ。なんか変だぞ?」

声が裏返り、妙に張り切って返すウソップをルフィが訝しげに見た。「バッ…!んなことねぇよ!!」と反射的に言葉を返すウソップの竿はプルプルと震えている。

「そうか?でもよー…」
「ね、ねえったらねえ!!おれは普通だ!!な、ナミ!!」
「えっ?あー…そうね」
「ほらなっ!」

少し離れたところで二人の会話を盗み聞きしていたナミは引き攣りそうになる表情筋を持ち上げて笑顔で答える。
そのお蔭もあってなんとかルフィを言いくるめたウソップはようやく本題に取り掛かった。

「で、何があったんだよ。変って何がだ?」
「んー…実はよ」
「…おう」
「おれ、吸血鬼になったかもしれねえんだ」
「ほーう、吸血鬼か!そりゃオメー…き、きゅうけつき!?」

予想外の言葉にウソップは数日かけて用意していた言葉もふっ飛ばし大声を上げた。飲み物を飲んでいたナミがゴフッと吹き出しサンジが駆け付ける。

「な、どッ!」
「な?ど?」
「な、なんで!どういうことだ!?」

血の気が引き、真っ青なウソップが竿を投げ出しルフィの肩を掴む。その気迫に押されることなく眉間に皺を寄せたルフィは「わかんねえ」と一言言い放った。

「でもよ、すげー噛みつきてェんだ」
「なッ…!おれの首にか!?」
「いや、ウィズの」
「………」

両手で首を隠すウソップにルフィは真剣な表情で言い放つ。その様子にウソップはしばし固まり「…え?」と呟いた。

「お、おまえ…!」
「やっぱおれ、吸血鬼になっちまったのかなー」
「い、いや…!それは…」
「…やっぱり変だぞウソップ。顔、すげえ真っ赤だ」

眉間に皺を寄せたルフィに見つめられ、ウソップは慌てて両頬に手を当てた。

頬が熱い。かなり熱い。しかしまだあのよくわからない使命感は少しだけ残っている。

数度深呼吸をして自らを落ち着かせたウソップは訝しげに見つめてくるルフィに向き直り、意を決して言葉を発した。その真剣な表情にルフィはごくりと唾を飲む。

「ルフィ…質問に答えてくれ」
「…おう」
「今体が焼ける感じするか?」
「いや」
「今日の昼、普通にニンニク食ってたよな?」
「おう」
「これ、見てたら苦しいか?」

指をクロスさせて作った十字架を見せるとルフィは「全然」と言いながら首を振った。

間違いない。ルフィは吸血鬼になったわけじゃない。

「はっきり言う…それは……」
「(ごくり)」
「吸血鬼になった証拠だ!!!」

ウソップもまだまだ思春期の十七歳。ノリでの下ネタはまだしも、リアルなルフィの性欲に「オメー、そりゃ性欲だ」なんてあっさり言える程大人ではなかった。
「やっぱりそうなのか!?」と叫ぶルフィの他に「「んなわけあるかー!!」」というツッコミがどこかから飛んできたが、ウソップはそれらを丸っと無視して「今の吸血鬼は太陽もニンニクもこわくねえんだ!」と吸血鬼の説明をしだした。これには今にも殴りかかりそうになっていたサンジも、それを必死に引き留めていたナミも呆れかえるしかない。

「ほんっと役立たず…!」

その一言で全てを投げ出したナミは我に返ったサンジがルフィに殴りかかろうとそれによりバランスを崩したルフィとウソップが海に落ちようと我関せず。ただただ騒がしい声を聞きながら飲み物に刺さったストローに口をつけた。


戻る



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -