奈落の底で再会
「ド低能が」
そう吐き捨てた父は、目線を逸らして私の方を見てはくれなかった。
「自分から井戸に飛び込んだ? 何を考えているやらさっぱりだな」
「うん」
「私は何度お前に諦めるなと教えただろうな? 諦めなければ必ず機会は向こうからやってくると」
「そうだね」
「辛かったか? 苦しかったか? 言い訳にもならん」
「そっか」
「馬鹿娘が。いくら働き者で気立てが良くても、死んでしまえばそれまでだろう」
「わかってる」
「家から逃げ出しもせず、反抗もせず、いきなり死に走るなど愚の骨頂だな」
「そうかも」
「……私は、落ちたくて落ちたわけではないのに」
「……ごめん」
何の感情も見えない言葉が逆に悲しくて、私はそっと父に歩み寄って抱きついた。
なんだか記憶より細くなっているような気がしたけれど、それはやっぱりまぎれも無く父の身体だった。
(それでも、私はお父さんに会えて嬉しかったよ)
(そういうと、父は悲しそうな顔をして黙り込んだ)
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