おそろいの鉢植え

小さな鉢植えを買った
たまたま見つけた雑貨屋さんで一目惚れしたミルク色の陶器のかわいい鉢植え
紙袋から見えるゆで卵のようなつるつるした表面に思わずにやけてしまう
何を植えようかなー?
そう思って鼻歌交じりで近所のガーデニングショップにやってきた
とりあえず霧吹きとじょうろと、あと土とえっと···
必要なものをかごに入れつつ色んな花の苗や球根を吟味していると、見知った顔の人が目に付いた
尽八···くん?
おー!彼女さんではないか 奇遇だな!
まさかこんなところで会うなんて思わなかったよー 尽八くんってガーデニングに興味があったの?
いや、そこまでではないのだがな彼女さんこそ、何か用事があって来たのか?
かわいい鉢植えを買ったから何か植えようかなって思って見にきたんだよ
そうかそうか!俺もこの間鉢植えを買ってな!鉢植えだけでは寂しかろうと探しに来たのだ!彼女さんと一緒だな!ハッハッハ!
そう言って彼は携帯端末を取り出して操作し、画面を私に向ける
そこに表示されていたのは私が買ったものと同じ鉢植えだった
へっ!?
思わず変な声がでてしまった
? どうした?
首を傾げている彼に、雑貨屋さんの紙袋から例の鉢植えを取り出して見せる
彼は一瞬びっくりした顔をした後、嬉しそうにその鉢植えを手に取った
彼女さんもこれを買ったのか···!俺と一緒の物を買っていたなんて彼女さんはセンスがいいな!
私のセンスはともかく、なんか面白いね
あぁ まるでコントの様だ!巻ちゃんにも報告せねば! ···あー、ところで彼女さん せっかく同じ鉢植えなのだ 植えるものもお揃いにする···というのはどうだろうか?
そう言って頬を掻きながらはにかんだ彼の様子がなんだかくすぐったくて、いいよ とその提案を快諾した
本当か!?では、何を植えようか共に決めようではないか!
キラキラと目を輝かせ私の手を掴み花のコーナーに走り寄った いきなりの行為に顔が赤くなってしまったが、彼は無意識のようで楽しそうに花の苗を見ている
その集中力に感心していると、彼が薄紫の小さな花がいっぱいついた苗を指さした
彼女さん!これはどうだろうか?多年草で育てやすいと書いてあるぞ!
わぁ···これ、かわいいね
だろう?まるで彼女さんのようだ!
ふふっ、ありがとう お世辞でも嬉しい
お世辞じゃないぞー
むすっとした彼を横目に花の名札を見る
アガパンサスっていうんだ、この花 ちょうど2株あるし、これにしよっか!
うむ!ではこれは俺から彼女さんにプレゼントだ!
いやいや そんなの悪いよ
構わんよ!むしろ彼女さんには幾らでも花を贈りたいぐらいだ!しかし、どうしてもというならば俺と互いの花の経過報告でも連絡し合わないか?
そんなので良ければいくらでもするよ!
そうかそうか!では、これが俺の連絡先だ!いつでも連絡してきてくれていいぞ 彼女さんからならば大歓迎だ!
尽八くんって優しいんだね ありがとう この花、大切にするね
あぁ ではまた、学校でな!
うん!



彼女さんと別れて寮に帰りつき、早速花の苗を鉢植えに移し替えようと花の名札を取った
アガパンサス···か そういえば俺としたことが、花言葉を気に掛けるのを忘れていたな
名札の裏にあるだろうか 捲ってみると書いてあった花言葉に顔が見るみる間に熱くなっていくのが分かった



花言葉:恋の訪れ









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