「月島さん、これ」

『あ、ありがとうございます』

木曜日の放課後、私は美化委員の仕事に追われていた。

先輩付き合いや先生と関わるのは苦手だけど、
美化委員には入りたい理由があった。


『次は屋上庭園の、花壇整理』

箒とごみ袋をもって、屋上への階段を優しく駆け上がった。


重い扉を開けると、私の大好きな風景が現れる。


(ーーきれい)

風に躍る花々と
それに向かって浅く染まる
空のグラデーション

はぁ、美しいわ



なんて美しい場所。
わたしはここにくるために立海に入ったのかも。

植物や自然は私の癒し!
ああ、なんて素敵!



美化委員の掃除する箇所をさがす。
こんな素敵な庭園に欠陥があってはならない。

毎日ここにくるのが楽しい。
鼻歌を口ずさんで、箒をメロディにのせて揺らす。


ふいに、視界に人影が散らついた。

『(わ!人が居た!)』

恥ずかしいけど、チラッと顔を伺ってみた。


『(…!え、)』


思いも寄らぬ人物…!

立海テニス部 部長の
幸村精市 さん、

だよね…


驚いたけど、
とくにおかしいことではない。

この人も美化委員だもんね。


それにしても
なんて綺麗なひと……


藍色の髪が、風に舞って
透きとおった肌が、美しくて


「あぁ、えっと…」

『!』

ずーーっと、見惚れてしまっていたらしい。

『…ぁっ、えっと…っすみません!!』


オーバーリアクションといえる程の大きな礼をして、
ごみ袋と箒を抱えて、扉まで走った。


『…はぁ…はぁ…』


恥ずかしい…
ずっと、見つめてたあの美しい顔。

初めて、みたから…

『幸村精市さん…』


(…こんなに、引き込まれるなんて…)




家に帰っても、
胸がなんだかふわふわして

変な感じ。ずっと…




「おはよ、めい!」
『あっ、おはよう』

高校で1番仲の良い友達、
毎朝どおり声を掛け合う。

そして、なんだかいつもと視線が違う。

『なに…?』

「なんかあったの?なんかぽけーっとしてる気がするけど」
『そんな…そんなことないよ』
「そう〜?」
ならいんだけどね、といってイタズラな笑みを浮かべた友達と、教室まで他愛もない話で盛り上がった。

(あたし、顔なんか変なのかなあ…)

なんでなんだろう、
なんでこんなに胸がふわふわしてるんだろう


これって、なんていう気持ちなんだろ。



サイダー


(もしかして:恋)(なーんか胸がしゅわしゅわする)(なんのために美化委員になったと?)





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