鈍感の先 1 side/小桜 春の陽射しが麗らかな四月末の休日。唯一部活が休みである日曜日を思う存分に使うべく、まずは昼食をと、寮の食堂にいつものメンバーで訪れていた。 寮に住んでいる生徒はあまりいない。一学年で8人でも入れば多い方で、自分達の代は6人だった。これでもまぁ多い方で、入寮しない理由は学費が増えるから。学費が安いからとこの学校を選ぶ人は多いため、皆当然のように入寮を渋る。しかし例外はいるもので、特待生はその例外の代表例だった。 特待生は寮費免除。 そのかわり、特待生としてこの学校に入学するのは大変難しい。寮費免除とは、寮で掛かる費用一切を賄ってくれるため、それはもう条件が厳しく、部活に入部する予定なら、大会等である程度、最低で県ベスト1の成績を持っているのが条件だった。 兎に角、その難しい条件を見事に潜り抜けた人間が、この寮に集まっていた。その中でも例外はやっぱりいるらしいけど、そんな事気にしていられない。今は部活で精一杯で、この週一の大切な休みを大事にせねばいけないのだから。 「ねーミヤ」 「なーにー?小桜ちゃん」 隣に座るルームメイト兼友人に声を掛ける。間延びした話し方が特徴的な、何とも馬鹿らしい特徴だけれど、線の細いミヤに話し掛ける。小宮だからミヤ、そう提案したのはミヤからだった。モカオレンジの目を見て声を出す。 「ミヤって好きな人いんの?ってか、前の二人もだけどさ」 「……は?」 「え、俺達も…?」 突然に話題を振れば驚いた顔をした男子二人。寮の部屋が隣の、駒井と服部。当然だと頷けば二人が手にしていた食器をテーブルに置く。それに習って慌ててアタシも箸を置き、視線を戻す。呆れたような顔をした駒井と、対照的にニコニコしている服部が目に付いた。 「好きな人だっけ?…小宮はいる?」 「いないよー」 「じゃあ駒井は?」 「…………………いる」 「うそ?!」 かなりの間を空けて返ってきた駒井の返事に驚き、声を上げた。すると駒井の眉間に皺が寄り、嫌そうに顔を顰められた。 仕方ないじゃん、気になるんだから。知られたくない事だったのだろうか、でもそれなら言わないよね普通。ぐるぐる一人でに考え、それから駒井本人に聞いた方が早いと、尋ねようとした所、駒井が口を挟んだ。未だ答えていない服部に話題を振る。 「お前は?」 「………俺?」 不意に服部の声のトーンが下がる。戸惑いが混じるように聞こえたのはきっと間違いではないと思う。どうしたのだろうと、少し考える素振りを見せる服部を見遣った。 数秒の間考え、何かが纏まったらしい服部がコッチを見る。それも、ミヤではなくアタシの方を、何故か真剣に見える目で。その目力に身動ぎ、ミヤに目を向ければヘラリと笑みを一つ零され、前を向くように指示される。 「俺は畑が好きだよ」 その熱い眼と、声に、何かが壊れたような気がした。 back - next 青いボクらは |