呼び声 1



side/周

(あれ…?)

ふと感じた違和感に首を傾げる。可笑しい、何かが可笑しい。何が可笑しいのかも分からず、ただ漠然と可笑しいと思った。先程したように教室中を見渡す。

勘違い、だったのだろうか。でも消えない違和感は確かに内心にある。思わず唸るように低い声をだして考えた。眉間に皺が寄っていくのが分かる。しかしそれどころではない俺はそれを気にしてはいられなかった。

「何やってんの?」
「あ、畑」

訝しげな視線を隠しもせず畑が、なにやってんだコイツみたいな目で話し掛けてきた。礼儀を欠いている視線に、苦笑いが零れる。畑は分かり易くて可愛い。表情も豊かで、感情の起伏も明確だ。だから、見てると心を激しく揺さ振られる。

「いや、何か変な事があって…」
「変って、何が?」
「それが分かんないんだよねー」
「…。」
「馬鹿じゃないのみたいな目しないでよ」

にこりと笑えば、畑は嫌そうに顔を歪めた。気にせず教室を見渡す。特に変わった様子のない教室、クラスメイト、風景。やっぱりさっきのは気のせいだったのかも知れない。そう思って畑に視線を戻した。

「何かわかった?」
「んー…分かんなかった」
「なにそれ」
「あはは。で、畑は俺に何の用?」

聞けば、畑は教室に視線を回し、そして再度俺を見た。「別にたいした事じゃないんだけど」と前置きして言った畑に、俺は心底驚く。畑がこんなに下手に(と、言うよりは丁寧に)出てくるのは初めてだった気がする。

正直、聞きたくない。

畑が何を聞きたいのか分かっているから。それは俺が答えたいものではなくて、出来れば違っていればいいなと思う。でも、どうせこの予測は的中しているんだろう。

「駒井とミヤがどこにいるか知らない?」

尋ねてきた畑の瞳は不安に揺れていた。浮かべる表情もどこか暗く、あまり元気は無さそうだった。その原因を、どうして畑は気が付かないんだろう。本当はちゃんと分かっているくせに、畑は知らないふりをする。

ねえ、畑。
そんなに駒井と小宮が一緒にいない事が不安?



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