平行線、延長線 2 駒井と一緒に食堂に行けば、既に小宮と畑が席についていた。テーブルの上に食器が無い様子を見ると、恐らく小宮が待っていようと提案したのだろう。畑一人ならきっともう既に食事に有り付いている筈だから。 「おはよう畑、小宮も」 「おはよ」 「おはよー二人ともー」 「……はよ」 間延びした小宮の挨拶を聞くと、何だか気が抜ける。妙な脱力感を覚えて席に着く。今日の当番は誰だっけ。少なくとも俺ではなかった筈。視線を彷徨わせば小宮が立ち上がった。 それと同時に駒井も思い出したように席を立つ。ああそうだ、今回の食事を取りに行く当番は駒井と小宮だった。どうやって順番を決めたのかはあまり定かではないけれど、確か名前順でグループに分けた気がする。遠退く背中をぼんやりと見つめてはっとした。 俺今、畑とふたりきりじゃんチャンスじゃん。 「畑、」 「…な、に」 「そんなに警戒しないでよ」 流石にそう露骨に顔を引き攣らせて体をビクつかされると傷付くものがある。どうしたら畑の警戒心を少しでもなくせるか考えて、取り敢えず笑みを携えてやんわりとした風に話す事を決めた。誰だって笑い掛けられたら初対面で無い限り安心するだろうし。 「警戒してないし」 「はいはい」 「…で、なにさ」 何と聞かれても、特に意味があって話し掛けたわけではなかった。ただ単に声が聞きたかったでは駄目だろうか。そう口を開こうとして、そして一つの疑問が浮かぶ。 畑はまだ、気付いてない…? 「畑、まだ気付いてない?」 「はあ?何の事言ってんの」 「最近、何か身近で変化ない?主に気持ちとかの面で」 そう尋ねれば首を捻り出す畑。眉を顰めて思い当たる節が無いかを考えている。視線が上を向き、顔も上の方へと持ち上げた畑を見て、答えを聞かずとも確信する。 畑はまだ気付いていない、まだ。 焦り半分、嬉しさ半分。素直に手放しで喜べないのは畑が気付いてしまったらどうしようかと思う反面、気付いてくれないと俺は確実に畑を自分に惚れさせる事が出来ないというわけの分からない焦り。 だけど、もう俺達は二年生だ。一年なんてあっと言う間だし、三年になれば問題が自然と増えていく。畑だけに集中したくとも、そんな事叶わなくなってしまうのだ。 「ない」 「…そっか」 なら早く自覚して。その胸の内に秘められた、本人が気付いていないその蟠りに、想いに。まるで焦げ付く様な感情を。畑が、本当は―― 「ただいまー」 「あ、ミヤお帰り」 「ありがと、二人とも」 小宮と駒井がお盆を手に帰ってきた。今日のメニューはパスタらしい。目の前に置かれた昼食を見て、そしてばれないだろうと畑を盗み見る。 心臓部が、その時見た畑の表情に酷くざわついた。 back - next 青いボクらは |