平行線、延長線 1 side/周 畑に告白してから、結構な日数が経った。最初は警戒心バリバリだった畑は、最近では前のように普通に接せられるようになってきたらしい。はっきり言ってしまうと失礼だけれど、畑は頭を使うのが苦手だから、多分考える事を投げ出したんだと思う。 忘れて、しまったのかな。 そう考えて、テンションが下がった。それはもう、世界恐慌顔負けの激しい右肩下がりで。 「暗い顔だな」 「駒井…」 「仕方ないっちゃあ仕方ないだろうけどな」 ベットで仰向けになっていると、駒井が奥の部屋から出てきたのだろう、傍に立ちわざわざ声を掛ける。内容が内容なだけに思わず顔を顰めてしまえば、駒井はふっと表情を優しくした。けれど、時々見えたあの表情には届かない。 「もう昼だぞ」 「あー…うん」 「行かないのか?」 「いや行くけど、なんか…」 「……忘れちゃいねえだろうよ」 「え?」 聞こえた言葉に目を瞠る。俺の驚きの視線を受けて、駒井は呆れ顔をした。馬鹿じゃねえのと声に出さずとも物語る表情に更に困惑が増していく。だって俺声に出してない。 「行くぞ、小宮達が待ってる」 「…うん」 時々、こうやって駒井は最後まで教えようとしない事がある。それは小宮がよくやるようなはぐらかすとか、隠すとか誤魔化すとかじゃなくて、教えようとしない。きっと聞いても教えたくないの一点張り。前例は既にある。しっかり経験済みだ。 ドアの所で靴を履いている駒井に置いていかれないように、急いでベットから体を起こした。駒井はもう靴を履いていたので、待たせては悪いと靴に手を伸ばせば、駒井が制止を掛けてきた。一体何か問題があるのだろうか、昼食を誘ってきたのは駒井自身だと言うのに。 首を傾げて見遣れば、駒井が溜息を一つ零した。ドアに寄り掛かって、どことなく怠そうで、でも柔軟な雰囲気を纏って目で机を示した。 「あ、」 「鍵がねえと部屋入れないだろ」 「…忘れてた」 「取ってこい」 またやってしまったと、机の上に放置されている鍵を手に取る。しっかりとポケットに入れ、ドアの方へ振り向くと、駒井はドアノブに手を掛けていて、外で待ってると一言言い残してさっさと行ってしまった。因みに返事は返せていない。 「…いいなぁ」 見えた後ろ姿を思い出して呟く。よくクラスの人達が駒井って格好良いと話しているのが今ようやっと理解できた。確かに、先程の後ろ姿は格好良かった。 あれほど格好良ければ、畑は俺を今以上に、勿論そういう対象として意識してくれるのだろうか。好きなって、俺だけを見てくれるようになるのだろうか。今は叶わない仮定は止まらず頭の中を駆け巡る。過ぎる仮定はどこまでも希望的観測だ。 ―ぐう 「…。…早く行こ」 誰にも聞かれていない方が、どうやら恥ずかしいらしい。 back - next 青いボクらは |