犬男と猫女。 わたしがなでると、嬉しそうにじゃれつく君。やめるとすぐ被さってきて、もっともっとと催促してくる。首筋を舐める君は、わたしがくすぐったそうにすると喜んでもっと舐めてくる。ああ、ほら、そんな笑顔で見つめてくるから、わたしはずっと君の虜。 「ずっと一緒にいようね」 「……オイ」 「いやーん、わたしもわんこ欲しい!」 「桜子っ!」 「なんですか」 「なにが、ずっと一緒にいようね、だ!お前、犬にそんなこと言ってて恥ずかしくないのかよ!」 「恥ずかしくないもんねー」 「わんっ」 「よしよーし」 「手懐けるな!」 信長はそう言ってわたしからおもちゃを取り上げ、庭に向かって思いっきり投げた。信長わんこはおもちゃを拾うと、近くにいた信長のお母さんにじゃれついた。 「あー!ちょっと!」 「かっかっか!ほら見ろ、あいつはお前じゃなくても別にいーんだとよ!」 「…むぅ」 「お前、俺に会いにきたんだろ」 「うーん」 「なんだその微妙な反応」 「半分はね」 「は!?」 「うそだよ」 「…なんだよ、馬鹿にしやがって」 あーあつまんね、と言ってわたしに背を向ける信長。その背中をじいっと見つめるわたし。明らかに信長は拗ねてるけど、わたしはなにも言わない。このあとどうなるか大体わかるからだ。 「…なんでなんも言わねえんだよー!」 沈黙に耐えきれなくなった信長がわたしに抱きついてきた。もう、予想通りの反応すぎて、笑いが止まらない。 「…なに笑ってんだよ」 「なに犬に嫉妬してんの」 「は!?ちげーよ!」 「信長はさ、犬だよね。わたし信長にしっぽ見えるもん」 「なんだよそれ」 「猿のしっぽかな?」 「てめっ…!」 そうやってわたしをくすぐる信長のしっぽは揺れていた。ああもう、可愛いなこいつも! 「信長わんこも、だいぶわたしに馴れてくれたよね」 「そーだなあ」 「信長が嫉妬するくらいにね」 「ほっとけ」 「それってさ、わんこが懐くくらいわたしがこの家に通ってるってことだよね」 「そーなるな」 「それはさ」 「ん?」 「そんだけわたしと信長が仲良しってことでもあるね」 そんなわたしの言葉に嬉しい感情のボルテージがMAXになった信長はまた抱きついてきた。わたしにだけ見えるしっぽはやっぱり大きく揺れていた。 「よしよーし」 「桜子、ほんと好き」 ああ、もう、わたしだってそうだよ。やっぱり可愛いなあ、犬は。 「桜子」 振り向くと視界は信長の短い睫毛でいっぱいになっていて。触れるだけの不意打ちのキスをした信長のしっぽは見えなくて。 「これは犬にはできねーだろ!」 ああ、やっぱりわたしは 信長が好き! |