猫男と犬女。 「ねー楓」 「む」 「一口ちょーだい」 「ほれ」 「わーい」 「楓くーん」 「む」 「今日一緒に帰ろう!」 「いつも帰ってんだろ」 「いや、なんか言ったみたくなって」 「どあほう」 「かーえーでー」 「む」 「はいっ、レモン」 「おー」 「桜子」 「なに?」 「桜子ー」 「だからなに!」 「呼んだだけ」 「なにそれ!」 …こんな感じで、楓は4,5回に1回くらいしか話しかけてこない。たぶん、わたしが話しかけまくってないと、回りの人は誰も私たちが付き合ってるなんて思わないと思う。 うっとうしいかな、なんて思うときもあるけど、楓は嫌なときは盛大に無視するか、盛大に舌打ちをするかのどっちかだし、ちゃんと目を見て笑ってくれるから、安心して甘えられる。 「ねえ楓」 「む」 「わたしたちがなんて呼ばれてるか知ってる?」 「知らねー」 「犬猫カップルだって!」 「納得」 「わたしが犬で楓が猫だってさ」 「あたりまえだ」 「いやー嬉しいね!公認だね!じゃあもう公然とチューでもしちゃおうか!!」 「どあほう」 しっかりデコピンをもらっても、まだ笑ってるわたしを見て、変なやつ、と楓は笑った。 「さっさと帰るぞ」 下校時間になって、先に廊下に出ていた楓に駆け寄ると、楓は顔色ひとつ変えずに自然とわたしの手をとった。 人通りの多い廊下がざわつく。 「えっ、楓…!?」 「む」 「さっき公然とチューは嫌って言ったくせに…」 「それとこれとは別だろ。つなぎたくなったから、つないだだけだ。わりぃか」 さらにざわつく廊下。いやいや!なんかそんなこと言う方が恥ずかしくない!? 顔を真っ赤にしてうつむくわたしを見てなのか、楓がふっと笑う声がした。 「じゃあもう毎日ここから手つないで帰ろうね!」 「やだ。今日だけ」 「なんで!?」 |