眠れない夜に

 静かな夜だ。私以外の何もかもが眠っていて、きっと誰も目覚めない。月の光が、薄いベールのようにわたしを包んでも、眠れない夜だった。温かいミルクも、つまらないお話も、誰もかもがわたしを放って眠ってしまった。
 こんな夜は、深海のような青い雨が降った。ざぁざぁという音は、わたしの心をゆさぶっていく。その音にまた眠れないでいると、わたしはそのまま、暗い海の中に引きずりこまれるのだ。何もない、暗くて寒い場所。それは夜にも似ていたけれど、夜とは違う、寂しい場所。わたしは海の底で、息の仕方さえ分からないのに、およぐことさえできず、ずっと沈んでいるしかない。
 海の底にはなんにもない。あるのは息苦しさだけ。曖昧な意識のなか、上を見ればきれいな月が浮かんでいた。きっと今頃、みんなは優しい夜に抱かれて眠っている。いいなぁ。ここは、寒い。わたしはまだ、海の底。



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