今日は空が曇っている。

リヴァイはナマエから貰った花のしおりを見つめながら、彼女のことを考えていた。

ナマエは、いつだって誰にでも分け隔てなく接する。それが年下だろうが年上だろうが部下であろうが上司であろうが。もちろん相手にちゃんと敬意は払っているが、とにかく人との距離感を掴むのが上手い。

人を不快にさせることはおそらくなく、時と場合や人によっては少し変わるかもしれないが、それでもナマエと一緒にいて気を悪くする人間は少ないだろう。

少なくともリヴァイはそう思っている。

そしてそれは自身もそうであった。
ナマエといると時間がまるでゆっくり流れているように感じる。それはナマエの話し方のせいなのかそれとも彼女の纏う空気感のせいなのか、定かではないがそれは彼女の魅力のひとつであった。

しかしナマエは自分は自分で他人は他人といったような考えも持っていて周りのことをあまり気にしていないような面もある。

彼女が何にも縛られていないように、また彼女も誰のことも縛ろうとしないのだ。

誰にでも人当たりが良くてわりと何でもすぐに受け入れてしまう分、本当のところは何を考えているのかが分からない部分が多少ある。
彼女は基本的に受け身タイプなのだ。

それでもリヴァイは最近他の誰よりもナマエとの距離が近づいていると感じていた。
受け入れられている、とそう思っていたのかもしれない。

しかしそれは自身から歩み寄っていた節があり、考えてみれば彼女の方から求められたことなどほとんどないような気もした。

ナマエの本心はどこにあるのだろう。

リヴァイはそれが知りたい。
もっと感情を剥き出しにしてほしいのだ。あの日約束を交わした時のように、もっと曝け出してほしい。翻弄したい、とでも言えばいいのか。そうしてリヴァイは欲深くなっていく。

彼女を手中に収めるには、彼女の気持ちを知るには、どうすればいい。

もしリヴァイがナマエにそう伝えれば彼女は答えてくれるだろうか。知りたいと言えば教えてくれるのだろうか?

しかしそれはフェアじゃない。

彼女の想いが知りたいのであれば、リヴァイの方も伝えるべきである。

だとしてもそれに勝算はあるだろうか。

リヴァイは考える。

──しかし、これは勝ち負けの問題ではない。ただ、伝えたいのであれば伝えればいい。そしてそれで彼女の気持ちが知れたら、それでいい、のではないか。

考えれば考えるほどだんだん分からなくなってくる。結局何をどうしたいのだ。

しかし、後悔はしたくない。諦めたくはない。と、思う。

リヴァイはナマエのことをそっと思い浮かべた。
側にいると、穏やかな気持ちになれる。
そしてそういった時間がリヴァイには必要であった。自身で必要だと感じたことはなかったが、それでもナマエといる時のあの時間が、リヴァイの心にゆとりを持たせてくれていることは確かだった。

たとえばそれは、紅茶を飲んだ時のような。まるでじわじわと温かくなっていくような。彼女といるとそんな感情が生まれるのだ。

そうして彼はナマエを恋慕する。

知りたいだけ、側にいるだけでいいなんて、綺麗事ばかりを並べてはいられないことに気がつく。
それだけではもはや、足りないのだ。


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