──兵長の誕生日の20日前。


「リヴァイ兵長、ナマエです。失礼します。」
「……、どうした」
「あ……。何してるんですか?」


何をプレゼントしようか迷いに迷っていた私は、こうなったら本人からそれとなく聞いてみようと思い兵長の部屋を訪れた。するともう12月だというのに兵長は窓を開けて、寒々しい中そこに立っていた。


「いや……空を見ていた」
「空、ですか」
「ああ」


なんとなくその隣まで来てみればそこから見える夜空。私も窓辺に寄りかかり、見上げてみた。


「…今日は少し雲ってますね」
「ああ……星が見えねぇかと、思ったんだが」


ちらりと、兵長の横顔を見てみるとなんとなく、いつもと違う感じがした。


「……好きなんですか?」
「……、」
「…星、」


すると兵長も横目で私を見て、だけどまたすぐ夜空に視線を戻した。


「キレイだと思う」


その横顔はなんだか寂しげで、どうして今日は曇り空なんだと夜空へ向かって私は少し腹を立てた。


「…… あ……、」
「…何だ」
「っあ、いえ……。すみません、そろそろ部屋に戻りますね」
「あ…?お前、何しに来たんだ」
「では失礼します!」
「オイ……、」


結局私はその日何も聞かずに、そしてそのまま何も言うこともなく兵長のお誕生日当日を迎えた。





「リヴァイ兵長お誕生日おめでとうございます」
「…………、」
「……え、あれ、兵長?聞いてますか」


当日、頃合いを見計らって夜になってから部屋を訪れお祝いの言葉をかければ、兵長は黙ったまま私を見つめていた。


「いや……他の連中からは朝から散々言われていたんだが、お前は日中何も言ってこなかったから忘れているのかと思った」
「……あ、そうだったんですか?すみません」


そんなふうに思っていたのか。悪いことをしたなと思い「覚えていますよ」と少し笑えば兵長は僅かに眉根を寄せた。


「で、それだけか?」
「あ…いえ。これ、プレゼントです。手作りなんですけど」
「プレゼント?」
「はい。ちょっと、部屋の明かり消してもらっていいですか」
「は、何でだ」
「お願いします。」
「……」


有無を言わせず兵長が部屋の明かりを消している間に私はそれの準備をして、暗くなった部屋で手元の灯りをつけた。


「何してんだお前」
「………これが私から兵長へのお誕生日プレゼントです。受け取って下さい」
「あ……?」


そう言って私が上を見上げれば兵長もつられるように見上げ、それと同時に部屋中に広がる星空のような光たち。


「お誕生日、おめでとうございます。兵長。星をプレゼントです」
「………、」


型紙に小さな穴をたくさん開けてそれを灯りで照らし、部屋の暗がりに満天の星を作る。二人で夜空を見上げた時に思いついたプレゼント。こんなもので喜んでくれるだろうかと悩んだけど、どうだろう。

すると兵長はそれを見上げながらぼそりと呟いた。


「…キレイだ」


その横顔は寂しそうではなかった。


「(あ…よかった)」


内心安心していると星に照らされた兵長はゆっくりと私を見て、それから柔らかく表情を緩めた。

それを見た瞬間、その顔が本物の星よりもキレイだと思ったのは、内緒だ。


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