紅茶の香りが鼻をくすぐり、目が覚めた。ベッドに横たわったまま顔を上げると先に起きていたナマエが紅茶を淹れていて、目が合う。


「あ……おはようございます。そろそろ起きる頃かなぁと思って」


そう言ってふわりと笑ったナマエは俺にいそいそと近づいてきて、そっと唇を寄せてきた。俺は寝起きの頭で昨晩からなぜか積極的だなとそんなふうに思った。だがその理由はすぐに分かった。


「お誕生日おめでとうございます。兵長」


…ああそうか。今日は、俺の。





「誕生日プレゼント、っていうと少し大袈裟かもしれませんが……今日のハーブティーは私がブレンドしてみました。多分、兵長が好きな味だと思います」


どうりでいつもとは違う香りがしたわけだ。


「ハーブから作ったんですよ。すごくないですか…って自分で言うのもあれですけど」


少し照れくさそうに笑うナマエはいつも以上に愛おしかった。

さっそくそれを飲んでみるとペパーミントが入っているのか、随分と爽やかな味がした。


「スッキリするかなぁと思って。おいしいですか?」


おいしいに決まっている。返事と一緒に頷いてみせれば更に嬉しそうに笑った。

昨晩、珍しくナマエの方から一緒に寝たいと誘ってきた時は何かあったのかと思ったが、俺の部屋でこれの準備をする為だったらしい。
おかげで今日は朝からかなり気分がいい。


「あ、そうだ。ついでにサシェも作ってみたので、良かったら使ってみて下さいね」


紅茶を飲み終え制服に着替えているとカップを片付けながらナマエがそう言う。

その後姿を見ているとなんだか無性に胸が高鳴っていく。




「……ナマエ」
「 わっ、びっくりした」


シャツのボタンを留めるのも忘れ思わず後ろからナマエを抱き締めた。


「ありがとうな。愛してる」


柄にもなくそんな言葉をこぼせば、見えた顔は赤く染まり始めて、より一層愛しさが増した。

そんな幸せを感じた、誕生日の朝。


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