「ナマエ、新兵達に肉を買ってあげたって聞いたよ。優しいねぇ」
「……別に、前に約束してたから。それに体調崩してたせいで指導出来なかったし、そのお詫びってだけ。」


食堂で一人で居るとハンジが向かい側に座った。顔を上げ、なんとなく周りを見渡してリヴァイの姿を探す。
私が回復してからはお互い忙しいというのもあってあまり話していない。エレンとの実験もそう何回もするものでもないし。それでもリヴァイが古城に戻ってから会いに行けば会えるのだろうけど忙しそうなのでそれも控えていた。


「…ねぇ。」
「ん?」
「…今夜、モブリット空いてるかな」
「あぁ…多分空いてるんじゃない?なに、飲みに行きたいの?」
「うん。」


飲んでリヴァイとまともに会えない寂しさを紛らわしたい。それにモブリットは私とリヴァイの事も気になってたみたいだしちょうどいいや。ついでに二ファも誘おう。


「明日も仕事あるんだから、あまり飲みすぎないようにね?」
「うん」
「それにまたモブリットに抱きついたりしないようにね?」
「…しねぇよ。」
「でも前科があるわけだし」
「うるさい。あの時とはもう違う。リヴァイ以外の男に抱きついてたまるか」
「おぉ、ノロケですか?妬けるねえ」
「……スープにメガネ浸すぞ。」


いちいちうるさいハンジを睨む。
今の私がリヴァイ以外に抱きつくとかありえない。いや以前でもありえないのだが…でももうそれは絶対ない。それに今夜はそこまで酔うつもりもない。とにかく、あとでモブリットとニファに声をかけておこう。

パンをかじりながら今夜の予定を一人で勝手に決めるのだった。





「リヴァーーイ!」
「……。」


ノックもせずにドアが勢いよく開かれた。そして廊下にまで響くような声が聞こえてくる。そこには明らかに酔っているナマエの姿があった。


「久しぶりに古城まで来てやったぞ、喜べこの野郎!」
「……。」
「わざわざ来てやったんだぞ、嬉しいだろ!」
「とりあえず一刻も早くドアを閉めろ。」
「ん?そんなに早く二人っきりになりたいの?しょうがないな!」


面倒なテンションのナマエにため息が出る。正直こんなになるまで飲んでほしくないんだが。どうせまた相手はモブリットだろう。問題はそこだ。普通に飲む分にはいいんだが、ここまで酔うのはやめてもらいたい。
ナマエはドアを閉めるとイスに座っている俺にふぬけた顔でいきなり飛びついてきた。それを受け止める。


「リヴァイー」
「…今何時だと思っていやがる。」
「は?リヴァイこそ何時か分かってんの?寝てろよ!」
「だったら来るなよ。」
「はぁ?だってここまで来ないと会えないでしょうが!じゃないと話せないでしょうが!」


腰回りに抱きついたまま酒の匂いを纏い俺を見上げてくる。それにしてもテンションが高い。確かにここ数日ろくに話せていなかったのは事実だ。その寂しさから酒の勢いでここまで来たのだろう。それは分かるし来てしまったものは仕方ない。むしろシラフでならもっと早く来ていても良かったくらいだ。
こうして会いたかったのは正直俺も同じで、とりあえず調度いい高さにあるナマエの頭を撫でてやる。すると気持ち良さそうに目を細めた。


「リヴァイー」
「何だ」
「好きだよー」
「…あぁ。」
「好き。好きです。」
「分かってる。」
「モブリットとニファにさ、喋っちゃったよ」
「何をだ?」
「んーなんか、リヴァイとの事とか…昔のこと?なんか気になってたみたいだからさー。でもまぁ大まかにだけどねー…こんな関係だってことは、なんとなくしか言ってないよ」
「…お前が話していいと判断したんなら、いいんじゃねぇのか」
「そしたら会いたくなってきちゃって、こうして会いにきたわけなんだけれども」
「そうか。」
「本部じゃお互い仕事でそんなに話せないしねー」
「そうだな」
「リヴァイも寂しかったでしょ?」
「そうだな。」
「うわ、え、なんか素直!」
「否定したらうるさそうだからな。」
「なにそれ!寂しかったくせに寂しかったくせにー!」
「…分かったからちょっと待ってろ。仕事を片付ける。」
「えーもういいじゃんそんなのー」
「よくねぇ。すぐ終わらせるから黙って待ってろ。」
「……」


そう言うと納得のいっていない目で俺を見たあと、静かに離れた。そしてベッドに腰掛ける。しかしこのテンションのナマエを相手するのは面倒だな。この間に眠ってくれた方が有り難いような気もする。

そんな事を思いながらもまた騒ぎ出す前にさっさと仕事を終わらせようと机に向き直った。
そして数分後、早めに仕事を切り上げナマエを見ると真っ直ぐな瞳と目が合った。あまりにも静かだから寝たかと思ったが起きていたらしい。しかもずっと見ていたらしい。


「…終わったぞ」
「……」


声をかけると、さっきとは少し様子が違っている事に気がついた。


「どうした」
「……リヴァイって、兵士長になってさ、仕事量も増えたりして…でもちゃんとそれをこなしててさ。地下の頃を考えるとすごい変わったよね。すごいよね。」
「…何だ、いきなり」
「いや……すごいなーって、思っただけ」
「……」
「きっとさ…イザベルが生きてたら、兄貴すげーって、言うんだろうなぁ」


それは嫌味でも何でもなく、昔をただ懐かしんでいるように見えた。そしてナマエの口からこうもすんなりイザベルの名前が出てきた事に少し驚く。


「もし、二人が生きてて…調査兵を続けていたとしたら…、ファーランも器用な性格だから、分隊長あたりになってそうじゃない?」
「…そう、だな」
「案外似合ってるかもね…リヴァイがこうしているみたいに。」
「…かもな。」
「そういえばさ、この前リヴァイを看病してから自分にもそれが移っちゃった時、思ったんだけど」
「何を?」
「なんか前にもこんな事あったよなーって思ったの。その時は思い出せなかったんだけど、思い出した。地下に居た時、イザベルがすごい熱出してなかなか治らなかった時があってさ…私ずっと付きっきりで看病してたんだよ。心配で、ずっと離れなかった。そしたら最終的に私に移っちゃったんだよね、あの時も。」
「…あったな。そんな事も」
「で、回復したイザベルが申し訳なさそうに看病してくれるんだけどそれが逆効果っていうかさー、心配してくれてるのはすごい伝わってくるんだけど…大丈夫か、苦しくないか、ってずっと話しかけてこられて休まらないっていうかさぁ」


ナマエは懐かしみながら、楽しそうに話す。
その時の事は俺も覚えている。気持ちは分かるがイザベルが居たんじゃろくに休めないからと結局ファーランが看てたな。もちろん俺も様子は確認してたが。


「まぁ、イザベルはそういうところが可愛いんだけどね。」
「…ああ。」
「……ねぇ、リヴァイ」


ふいに名前を呼ばれ、イスから腰を上げナマエの隣に座った。


「何だ?」


すると俺を見たあとにフッと笑って抱きついてきた。そのまま二人でベッドに倒れる。


「楽しかったよねー、あの頃…」
「…そうだな。」


ぐりぐりと顔を俺に押し付けてくるナマエの背中に手を回し抱き締める。
こうしてナマエの中のあいつらの思い出が楽しかったことで満たされていけばいい。辛い事ばかり思い出していたんじゃナマエもいつまでも辛いだけだ。少しずつ、四人で過ごした日々を思い出していけばいい。話していけばいい。

こんなふうに話せるようになっただけでも良かった。今までは思い出すのも辛い事ばかりだっただろうから。


「ねぇリヴァイ」
「…ん」
「好き…、好き、だよ。ふふ、愛してる。」
「…分かってるから、そう何度も言うな。」
「はー?別にいいでしょ、何度言ったって…制限なんてないんだからさぁ」
「お前は本当に俺が大好きだな。」
「とーぜん。だって…リヴァイが居るから私は生きてると思えるんだよ?」
「……。」
「そりゃあさ、ファーランが私の居場所を作ってはくれたけど…意味をくれたのはリヴァイなんだからね。」
「……そう、か」
「だからちゃんと責任とりやがれよ?」
「……横暴だな。」
「何言ってんの、リヴァイだって私のことが大好きなくせにさー…」
「……。」


ナマエはそう言ってから静かになり、少しすると寝息が聞こえてきた。
寝るのかよ、と思いながらもそのままベッドに寝かせ毛布をかけてやる。


「……。」


幸せそうな顔で眠るナマエ。


「…責任、か。」


ポツリと呟き、静かになった部屋でその額にキスを落としそのまま少しの間見つめ続けた。





「オイ、ナマエ。いい加減起きろ。」
「………んー…。」
「いつまで寝るんだよ。」
「…も、う、ちょっと……。」
「ガキかてめぇは。起きねぇと熱い紅茶をぶっかけるぞ。」
「……やめろ、ばか……って、え……?」


痛みのひどい頭を押さえながら起こしてくるうるさい声に逆らっていると、それに違和感を覚える。リヴァイの声だと気づき目を開くとそこは古城のリヴァイの部屋だった。


「…は…、何で私、ここに居るの…」
「お前、何も覚えてないのか」
「……いつの間に…?」


眉根を寄せ記憶を辿り思い出そうとする。昨日は確かモブリットとニファと飲みに行った、はず。いや途中までは覚えてる。けど……


「お前は深夜にここまで来て楽しそうにしてたぞ。」
「だめだ何も思い出せない」
「だろうな。」
「……くそ…酔うつもりなんかなかったのに…。」
「よく言う。」
「うわー…何でだ……最悪。」
「そこまでの事か?」
「……だって、」


酔ってしまった事はこの際いい。ここまで来てしまった事もまぁいい。しかし何も覚えてないという事が問題なのだ。


「せっかく来たのに、リヴァイと居れたのに、…覚えてないとか」
「……」


ガックリきてシーツに顔を埋める。せっかくなら普通に過ごしたかったよ。なのに何ひとつ覚えてないなんて。ここまで来た意味がないじゃないか。

ごちゃごちゃと考えているとリヴァイが近づいてきて、ベッドに腰掛けた。それに気づきそっちを見ると顎を持たれ頬にキスを落とされる。


「…酒くせぇな。」
「っな、…う、うるさい、」


唇が離れると真顔でそう言われ思わず拳を握った。しかしその距離に気持ちは落ち着いていく。


「まだ時間はある。もう少しゆっくりしていけばいいだろ。」
「……そう、だね」


キスのひとつくらいでまぁいいかと思えてくる自分が、我ながら単純だと思う。
そのまま黙っていると髪をわしゃわしゃと撫でられる。リヴァイって昔よりもこういう軽いスキンシップが増えたような。それにあの頃は私よりイザベルの髪を撫でる方が多かった気がする。考えてみると私はあんまりこんなふうにされてないな。昔は。どっちかというとファーランの方が撫でられるのは多かったような。


「(…懐かしい、な)」


ファーランの手つきは優しくて温かかった。今でもよく覚えてる。リヴァイの手ももちろん好きだけど、少し違う。というかリヴァイは撫で方が少し荒々しい。だけどファーランの手つきはいつだって優しくて、私は素直じゃないから嫌がったりしていたけど本当はそれが好きだった。でも多分それも分かってたんだろうな。
地下というあんな落ち着かない場所でもファーランと居れば心が落ち着いた。一人だった私に誰かと居る安らぎを教えてくれた。ファーランと出会えてなかったら私は今どうなっていたんだろう。リヴァイともきっと出会えてない。あのままずっと一人だったのかな。ファーランが居たから、今の日々がある。もっとずっと、一緒に生きたかったなぁ。


「…どうした」
「……え?」


いろいろ思い出していると、リヴァイは手を止め私を見つめてくる。


「…何を考えてんだ」
「何って……別に…ただ、ファーランにもこうやってよく撫でられたなーって、ちょっと、思い出しただけ。」
「…そうか。」
「うん。…ファーランはもっともっと優しく撫でてきてたな、と。」
「……何言ってんだ。俺だって十分優しいだろ。」
「リヴァイのはさ…こう、荒いっていうか。ファーランは私にそれはそれは大事そうに触れてくれたよ。」
「ふざけるな。俺だって大事にしまくりだろうが。大事すぎて逆に壊したくなるくらいだ。」
「それどんな思考だよ……いやまぁ冗談だけど。荒々しいってのは本当だけど、リヴァイが私を大事にしまくりなのはちゃんと分かってますよ。」
「そうか、そう言われるとムカつくな。」
「そっかそっか。私のこと大好きなんだね。」
「お前が俺を大好きなんだろうが。」
「逆でしょ?」
「お前は覚えていないかもしれんが、何度も何度も俺に好きと言っていたぞ。愛してるだとか。それに、ファーランが居場所を作ってくれたが意味をくれたのは俺だとか、そんなような事も言っていたな。」
「……。」
「責任をとれとも言っていた。どうやらお前は俺が居ないと生きていけないようだな。」
「……そんなの、覚えてない。」
「俺ははっきりと覚えている。嬉しそうに飛びついてきた事とかな。」
「……。」


私はそんなに一人で盛り上がっていたのか?なんてこった。恥ずかしい。リヴァイへの気持ちがだだ漏れじゃないか。


「…え、てか、何もシてないよね?」
「してねぇよ。というかあのテンションのお前を相手したくねぇよ。」
「そ、そんなにテンションやばかった…?」
「何度も求められそうではあった。」


何それ私そんな感じだったの?そんなに好き好き言ってたの?何って事だ。そりゃあ好きなのはリヴァイだって私だって分かってるし何度言おうが問題はないはずだけど、でも酔って言うってのはちょっと違う。なんか恥ずかしい。というか馬鹿みたいじゃん…!

だんだん恥ずかしくなってきて、何とか尊厳を取り戻そうと考える。


「まぁお前が俺を大好きな事は昔からよく分かっている事だから気にするな。」
「…ちょ、調子に、乗らないでよね!別に私は酔ったら誰にだってそんな感じなんだからね!」
「は?」
「リヴァイにだけ好き好き言ってるわけじゃないんだからね!他の人にも言ってるんだから!」
「……ほう。そうなのか?」
「当たり前でしょ!多分ハンジとかモブリットにも言ってるはず!酔うとそうなるのが私の酔い方なの!昨日はそれがたまたまリヴァイだっただけなんだからね!」
「……。」


無駄に反抗的な、何の意味もない態度をとってみる。もちろん誰にでも好きなんて言うはずはない。記憶がないから分からないけどでも多分それはない。
しかし恥ずかしさからそう言っているとリヴァイは黙ったまま立ち上がり、私に手を伸ばしてきた。そして頭をがっしりと掴む。


「な、何すん……って痛ッ?!っちょ、痛い!!」


そのままベッドから下ろされ、引きずられる。(何この握力!?)
いきなり何なんだと抵抗するが意味もなく、窓を開けたかと思えば胸ぐらを掴まれ立たされる。そして窓から放り出された。


「ちょっ!?落ちる落ちる!!」
「…そうか?落ちると思うか?」
「いや落ちるでしょいやまじでッ!!」


上半身を窓から放り出され、首元を掴まれてはいるが片手だししかも今にも落ちてしまいそうな状況にさすがに焦る。背中は地面に向き、見えるリヴァイの表情は変わらず無表情。


「この高さはやばいから!!装置もつけてないから!!」
「落とされたくなかったら、…そうだな。俺の好きなところでも言ってもらおうか。」
「なにそれっっ!!不安になった女子かよ!!」
「五つでいいぞ。」
「しかも地味に多いなっ!!っえ、ま、まじで…?!」
「冗談を言っているように見えるか?」
「いや見えないけども…!正気の人間にも見えないけども…!!」
「早く言え。」
「っえ、好きな、ところ…?!え、えっと…!分かんないかっこいいところ!?」
「…適当に言うんじゃねぇよ。」
「うわっ落ちる!!!」


少し手の力を緩ませるリヴァイに私は体を強張らせる。いや実際に落とす気はない事くらい分かってはいるんだけど、でもそれにしてもこれは。


「な、え、ちょっ……す、すす好きなとこって…!だから、なんだっ……!えっと、だから……っ、」
「早くしろ。疲れてきたぞ。」
「ちょっ……、だから、その、そんなのっ…だからさっき言ってたじゃん!私に生きる意味をくれたからだってさぁ…!!それに強いところもそうだしっ、なんだかんだ優しいとこもあるしハッキリ物事言うところも嫌いじゃないし頭も悪くないしちゃんと部下とか周りの事とかも見てて理解しててすごいし兵士長とかやってて尊敬されてるのもすごいって思うし口は悪いけど思いやりだってちゃんとあるしそれに私のことだって(こんな事してるけど)ちゃんと愛してくれてるしぃー!!」


もう好きなところなのか何なのかも分からずとにかく叫んでいると、グンと体が持ち上がり部屋へと投げ込まれた。床に転がる私。


「…そんな事叫ぶんじゃねぇよ。」


ドキドキしながらお前が言わせたんだろ!と思いながらも言わない。というか心臓を落ち着かす事の方が先だ。


「まぁいい。お前が俺を大好きな事はよーく分かった。」
「そ、そんなの分かってるくせに……何なの……」
「…お前が馬鹿みてぇな事を言うからだろうが。」
「は…?」


馬鹿みたいなこと?何だっけ。何話してたのかなんてもはや忘れた。


「言っておくが俺は、前にお前が酔ってモブリットに抱きついていたのを忘れたわけじゃねぇ。」
「え……」
「昨日も、アイツと飲みに行きあんなに酔っていた事に少し苛立ちを覚えた。だから、冗談でも酔えば誰にでも好きと言うなんて事は言うんじゃねぇ。」
「………。」


あ、もしかしてこの人ヤキモチとか妬いているのだろうか?
そうださっきそんな事言ったんだっけ。ってそれだけでこの人こんなデンジャラスな事をしてきたのか?怖いな。ヤキモチって怖いな。


「オイ。分かったか?」
「……あ、うん。分かった。」
「ならさっさと本部へ帰れこの尻軽が。」
「ちょっ尻軽て。だから冗談だってば…ただの照れ隠しじゃん分かってんでしょうが…ていうか普通あそこまでする?惚れてる女にあんなこと出来る?」
「酔い覚ましにはちょうどいいだろ。」


しかしヤキモチとか可愛いことするんだなリヴァイも。そういうのあんまり気にしなさそうなのに。
いやでもどうだろ…考えてみるとそうでもないような気もしてきた。


「まぁいいや…帰りますよ。おかげさまで眠気も何もかも吹っ飛んだんでね。」


立ち上がり、服を軽く叩く。時間はまだあるけどもういいや。


「私何も持ってきてないよね?」
「…ナマエ」
「え?なに?」
「次は、酔ってない状態で来い。」
「…え?」
「酔ってたら何も出来ねぇし、面倒だ。」
「……はいはい。了解です。」


それはもちろんそうするつもりだ。仕事の邪魔にならない程度にまた来よう。
そう思いながらデンジャラスで可愛い彼に手をひらひらと振り、部屋から出ようとする。


「……あ、」


だけどドアを開けたところで立ち止まり、振り返る。


「何だ」
「…いや、ごめんね。もう男の前では酔わないようにする。」


私のせいで少しでも嫌な思いをさせてしまった。それは事実。ちゃんと気をつけなければならない。


「…そうしろ。」
「うん。じゃあ、また本部で。」


それだけ伝え、今度こそ部屋を出た。


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