「バイトまでかなり時間があるので、お散歩でもしながらリヴァイさんに外の事を説明しつつ案内をしようかと思っています。異論はありますか?」
「ない。」
「じゃあ着替えたらさっそく行きますか」
「ああ」


朝早く起きて、座りながら喋っている最中リヴァイさんに半目になってるぞと言われながらも眠りたがっている体をなんとか立ち上がらせて洗面台に向かった。顔を洗うと多少は睡魔がどこかへと行ってくれたので、それからリヴァイさんに今日の予定を伝えた。

という事でこれからお外に行ってきます。


「おっさんぽー!イエーッ!!」
「…何だそのテンションは」
「無理にテンション上げて睡魔と闘っているんです。」
「隣を歩きたくねぇ。やめろ。」


拳を上に突き上げるとものすごく冷めた目で見られた。


「じゃあリヴァイさんはこれで。」


平常のテンションで昨日買ってきた洋服を渡すと、黙って受け取り人目も気にせず上を脱ぎ始めた。えっ私まだ居るのに脱ぐの?せめて場所変えないの?と驚いたが、まぁ男の人だし気にしないのかな…と一瞬で考え一瞬で納得した。そして声を上げた。


「なえええええええッ!?!」
「!?」


朝っぱらからかなり大きな声を上げてしまい、リヴァイさんもビックリしたみたいでこっちを見る。


「っなん、だよ。うるっせぇな…近所迷惑だろうが…殺すぞ」
「な、っえ、だ、だだだっ、だって!!!」
「だからうるせぇ。ボリューム下げろクソが。音響弾よりも耳障りだな」
「いやだって!!リヴァイさんヤバイ!!」
「あ?何だ?」
「ヤッ…ヤヴァイ!!」
「……頭イカれたのか?」
「き、着痩せするタイプですか!?」
「はぁ?」
「かっ、体!!体ですよ!!めっちゃ鍛えられてるじゃないですか!腹筋バッキバキじゃないですか!?なにこれコワイ!」
「……。」


その発言にリヴァイさんは呆れたような顔をして、渡した服を着る。


「あっちょ、まだ見たい!」
「知るか。じろじろ見るんじゃねぇ気持ち悪い。」


いや見るでしょう見ちゃうでしょう!!!

私がなぜ叫んだのかというとリヴァイさんの体がそりゃあもう余分な脂肪は一切ありませんみたいなかなり引き締められていて、そこにあるのはただただ筋肉だけだったのだ。別に筋肉フェチとかじゃ全くないんだけどこんな体つき生で見たの初めてで。思わず興奮してしまう。


「だってリヴァイさん小柄だしどちらかと言うと細身だったからっ…!まさかそんな体つきしてるなんて思わないじゃないですか!詐欺ですか!?」
「兵士だぞ。これくらい当然だろ。」
「えーそうなんだー!そっかー!うーわマジか!やっばー!兵士すげぇ!リヴァイさんやっばー!」
「……イラつくんだが殴っていいか?」
「だっめー!」
「(イラッ)…さっさと着替えろ変態。置いていくぞ。」
「えー!私が案内するのに置いてかれるんですか!斬新ですねそれは」


超不機嫌そうな目つきで見られたが、もはや気にならない。
だってリヴァイさんあんなバッキバキとか。いや確かに巨人と戦ってるんだから当たり前なのかもしれないけど。でもやべぇ。本気で驚いた。
眠気が軽く吹っ飛んだよ。多分もう戻ってはこないだろう。めっちゃ眠かったので良かったけども。

しかしいつまでも興奮しているわけにもいかないのでとりあえず私も着替える為に部屋を移動する。そして自分の体を見てみる。別に太ってはいないけど筋肉なんて一切ない。私は特に敵とか居ないし何とも戦わないからいいけど…改めてやっぱすごいな。
ていうかなんか古傷みたいなものが見えた気がするんだけど、気のせいじゃないよね。あれは多分普通に生活してたら出来るようなものではないだろうし、やっぱリヴァイさんは巨人と戦う調査兵団の兵士さんで…私の世界とは全く違う世界で生きているんだ。

昨日の過去の話もそうだったけど、今日もまたリヴァイさんとの違いになんだか距離を感じてしまった私だったのである。





「あれか?」
「はい。あれが信号です。光っている色で意味が変わるんですけど…赤は止まれ、渡るなです。青になると渡れます。」


一緒に歩きながらいろいろと説明する。とは言ってもリヴァイさんは不審者扱いされるくらいにはここらへんを歩き回っていたので、なんとなく把握しているみたいだった。


「あの色は俺には緑に見えるんだが。」
「……そうですね。確かにそうです。私も思ってました。だけどあれを人は青と呼ぶのです。信号の時に限っては。」
「そうなのか」
「とにかく、覚えて欲しいのは進行方向にある信号の色です。もちろんこっちに行きたい時はこっちの信号を見るんですよ?」
「ああ、分かった。赤が渡るなでミド……青が、渡れだな。」
「そうです。青です。で、ピカピカと点滅しだすともうすぐ赤になりますの合図なので、そうなると急いだ方がいいですね。赤になる前に渡りきりましょう。」
「分かった。」
「あとは前も言いましたが、あれが車です。轢かれないようにして下さい。リヴァイさんが避けられたとしても、多分車の人が焦って事故るんで。」
「ああ。…それより気になっていたんだが、あれは何だ?」
「え?…あぁ。あれは自転車です。あの足元のペダルを漕いで動かすんです。方向を変える時は掴んでるあれをこう…動かすんです。あれもわりとスピード出るんで気を付けて下さいね。」
「ほう……便利そうだな。(なんか馬っぽい)」
「そうですね、坂とかなければ楽ですよ。…リヴァイさんの世界では、移動手段は馬になるんでしたっけ?」
「…ああ。」
「すごいですね。私、乗った事ないです。」
「…壁外では馬を失えば命に関わる。それくらい大事なパートナーだ。」
「へぇ…馬も家族の一員的なポジションなんですね。」
「まぁ、そうだな」
「名前とかつけてるんですか?」
「…つけてねぇな。」
「えっ家族なのに?」
「大事にはしてるがそこまではいってない。」
「えー、そっかぁ……そうだなぁ…どうしようかなぁ」
「ちょっと待て。何を考えてやがるてめぇ」
「いやリヴァイさんの馬の名前に決まってるじゃないですか。」
「どうしようじゃねぇよ。何勝手に俺の大事な馬の名前決めようとしてんだ」
「私が真心込めてつけてあげますよ。」
「込めんな。何でてめぇに命名されなきゃならない?俺の馬が可哀想だろうが。」
「いいじゃないですか。せっかくなので名前決めましょうよ」
「お前が決めんな」
「オスですか?」
「お前が決めんな」
「メスですか?」
「お前が決めんな」
「何でですかもう!!」
「いや何でキレんだよ…それよりあれは何だ?」
「話を逸らそうとしてますね?その手には乗りませんよ」
「あれが何なのかクソ気になってもう他の事は一切考えられない。」
「嘘つけい」


リヴァイさんとは出会ってそんなに経っていないのにこうして気を遣わずに話せているあたり、実は私たち気が合っているんじゃなかろうか。もし同じ世界で生きていたら、友達になれたりしたのかな。


「オイ、ナマエ」
「……はいはい。何でしょう」


リヴァイさんは違う世界の人。なのにこうして出会ってこんなふうに普通に話してる。何でこの世界に来たのかとか、どうやって帰るのかとか、まだまだ分からない事が多いけれどこれはなかなか面白い出会いをしたと、私は思う。


「車とやらは、高級品なのか?」
「高級品?…まぁ、それなりにはしますけど」
「お前は持ってないのか」
「今のところ自分のは持ってないですね。でも免許はあるので、実家の車を借りる事はありますよ。」
「…ほう。」
「乗ってみたいんですか?」
「……わりと、気になる。」
「いいですよ。それなら休みの日にドライブでも行きますか?」
「乗れるのか?」
「はい。乗ってどこか行きましょう」
「いいのか」
「もちろん。私の運転で良ければ。」


超平凡でこれから先もバイトをしながらなんとなく過ごしていくのだろうと適当に思い描いていた私の未来は、どう展開していくのか分からないワクワクを潜めながらリヴァイさんと描いていく事になった。彼からすればこんな展開は望んでいなかったものだろうが、この出会いに私の胸は微かにドキドキしている。


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