その出来事はあれからずっと私の頭から離れなかった。テレビのニュースをいつもよりも真面目に見たり、バイトの行き帰りに周りをよく見て歩いたりと気になって仕方がない。あんな事が起きれば気になるのは当然と言えば当然だが。 気になって気になって、夢にまでリヴァイさんが出てきて、そして私は決めた。 探しに行こうと。 あれから三日間ずっと考えていた。それはもう毎日考えていた。バイト中も些細なミスをしてしまったりと落ち着かなかった。リヴァイさんはきっとまだ彷徨っているのではないか。まだこちらに居るんじゃないだろうか。 気になって気になって私はバイトが休みの日にリヴァイさんを探しに出かけた。一日中探しまくった。さながら気分は逃げてしまった猫を探すかのような。一日目は見つけられず、次の日もバイト前と後に探し続けた。そして三日目、朝から出ていた私は夕方頃から降り始めた雨に打たれながら走り回っていた。傘も持っていないだろうリヴァイさんを思うとコンビニに寄って自分だけ傘を使うという気にもなれなかった。 そして何時間かしてからネットで不審者の情報をゲットし、私はそこへ向かう事にした。ネットのなんか変なコスプレした男が居たという反応にそれは確実にリヴァイさんじゃないかと確信をもち少し面白いなと思いながら向かう。 それは私の家から二つ先の駅で見たという情報で、そこへ行き闇雲に探し回る。そして私は奇跡的に、彼を見つける事が出来たのだ。 「リヴァイさんっ!」 名前を呼ぶと、彼はそれはそれは驚いた表情で私を見た。 「……お前…。」 案の定ずぶ濡れのリヴァイさんは不審者というより捨て猫みたいで。 「やっと、見つけました」 彼の意思とは別に、拾って下さいと言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。 それは一週間ぶりくらいの再会。 リヴァイさんは陰に隠れてフードをかぶり縮こまっていた。 「リヴァイさん、よかった…すごい、本当に見つかるとか」 「……お前、何してやがる」 「いやぁ、なんか最近不審者の情報が多くて。住民が怖がるといけないんで、引き取りにきました。」 「……」 あれからまた何も食べてないのだろうか。ひどい顔をしている。頬も痩けている気がする。ほっとけないにも程がある。 家を出た時にせめて何か食料を持たせておけば良かった。いやむしろあの時に引き止めておくべきだった?いや…それは難しい、か。どの道こうなるとしてもいきなりそういう思考にはなれない。 「…大丈夫ですか?ずぶ濡れですね」 「お前も、じゃねぇか。なぜそんなに濡れている」 「いや、朝は降ってなかったじゃないですか?なので傘持ってきてなくて」 「…まさかずっと、探していたのか」 「でも雨って、服とか足元が濡れるのって本当嫌ですけど、こうも濡れちゃうと逆に楽しくなってきません?テンション上がるというか」 「……。」 なんねぇよ、という目で返された。 「……まぁ、そんな事よりリヴァイさん。戻る方法が分かるまで、家に居ませんか?」 「は…」 「このままだとリヴァイさん倒れるか捕まるかのどっちかしかありません。あ、戻れる可能性もゼロではないと思いますが。」 「…お前…何なんだ…」 「こんなところで雨に打たれていたら風邪ひきますよ。…リヴァイさん、もし風邪ひいてしまったらその時は薬とか持ってるんですか?持ってなかったとしたら病院に行けるお金はありますか?行けたとして受付とか出来るんですか?いや、無理ですよね…だってリヴァイさんこの世界の人間じゃないんですもん。だったらここは大人しく私についてくるのがいいと思うんですよね。多分、私を逃せば他にこんなお人好しは居ませんよ。」 「俺の話を…信じているのか」 「はい。わりと信じてます。信じてなかったらわざわざ探しに来たりはしません。」 「…俺自身も、頭がおかしくなっちまったんじゃねぇのかと…思っているのにか?」 「そうですね…確かに、おかしな話です。はいそうですかとすぐに信じられる話ではもちろんありません。でもあれからずっと考えていました…頭から離れませんでした。リヴァイさんのことが。話していたことも。その結果、とりあえず信じてみようかと思い至りました。」 「…馬鹿なのか?」 「まぁ、そうだと思います。でも、いいじゃないですか。家に来る事は別にリヴァイさんにとって悪い話じゃないでしょう?」 「……だが、お前にそんな義理、ねぇだろ」 「…確かにそうですけど…でも、なんか、ほっとけないですし。それにこのままだとリヴァイさん完全に捕まりますし。犯罪臭がプンプンします…通報されるレベルで不審者ですもん。」 「……」 「さぁ、大人しくついてきて下さい。」 「……いい、のか」 「あのね…言っておきますけど、私はもう三日間くらいずっとリヴァイさんを探し回っているんです。それなのにここで拒否されたら私の三日間は無意味という事になってしまいます。それはあんまりだと思いませんか?泣きますよ。雨に紛れて泣きますよ私。」 「……」 「帰ったらあったかいミルクを入れてあげますよ。」 「………犬か、俺は。」 「いえ、どっちかというと猫ですね。」 彼は呆れたように微かに笑う。 「リヴァイさん…行きましょう?」 「……、」 手を伸ばせば彼は私の手を握る。 こうして、彼と私の非日常な毎日は幕を開けた。 |