夜の街はキラキラと輝いていて、見るもの全てが綺麗に彩られている。息を吐くと白くなり、頬はうっすらと赤く染まっている。
今年の冬は例年に比べると暖かいが、日が暮れると空気が冷たくなり一気に寒くなった。
右手に感じる温もりを握りしめて右隣を見ると、それに気づいた彼もこちらを向いて、何だ、と呟いた。私は少し寒そうな彼の顔を見つめながら頬を緩ませて、何でもない、と答える。

夜だというのに街中は明るく、目に映る光景はひどく煌びやかで随分と変わったなとふと昔のことを思い出す。
──兵士をしていたあの頃、部屋の窓から雪が降っているのを二人で見た。外は暗くてそれ以外に何も見えなかったけれど、雪が降り積もっていくのだけをただ見てた。会話らしい会話もなくて、だけど側に居られるだけで十分なような気もして、冷えた体を温めるように寄り添いながら過ごした。
あれから時が流れて、それでも今もこうして側に居られることをとても幸福に思う。

あの頃とは何もかもが変わった街中を歩きながら、もう一度手を強く握って彼の腕にすり寄るように体をくっつけた。
世界は今日、クリスマスという文化に彩られている。街を歩いている人々もどこか幸せそうで、愛を確かめるように笑い合っている。
今日は特別な日だ。みんなが浮かれているこんな日は、きっと周りの目は気にならないだろう。
私は彼の方へぐっと体を乗り出して、一瞬だけ足を止めて彼の頬に唇を寄せた。傷のない左頬にキスをして彼を見てみると、突然のことに目を丸くしている彼と目が合った。黙ったまま見つめているとすぐに眉根が寄って、いきなり何しやがる、と静かに言った。
私は小さく笑って、彼の腕にぎゅっと抱きつく。



「誕生日おめでとう、リヴァイ」


そう言ってすり寄るように彼を見上げると、少しだけ眉間のシワが緩くなった。
嫌がることなく受け入れられているこの距離が愛おしい。


「朝から10回は聞いた」
「ふふ、さすがにそんなには言ってないでしょ?」
「いいや言ってる」
「そう?じゃあ次は11回目だね」
「……何回言うつもりだ」
「何回聞きたい?」


──今日は、リヴァイの誕生日。特別な日。あなたが生まれた大切な日に今もこうしてあなたと居ることが出来て良かった。
リヴァイは小さく息をつくと、ゆるりとこっちを見る。


「10年後の今日も、また聞かせてくれ」


リヴァイの穏やかな瞳が私を見ている。昔に比べると随分と表情が柔らかくなった。それが幸せで、私はリヴァイの右頬に手を触れる。今も残っている傷跡にそっと触れて、優しく撫でた。リヴァイはゆっくりと瞬きをすると少し近づいてきて、互いに引き寄せられるようにキスをした。優しくて、甘い。
まるで世界から祝福されているような輝きに照らされて、私たちは見つめ合う。そうして私は愛の言葉と共に11回目の言葉を彼に伝えたのだった。


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