「リヴァイさんに謝らなければならないことがある。」
「殴られる覚悟は出来てるか?」
「出来てないし、そこまで酷いことはしてないよ」


今日は大学の授業が午前で終わり、まだまだ明るい帰り道を二人で歩きながら私は話を切り出す。ちなみに今まで殴られたことは一度もない。


「この前さ、夢の国行ったときに撮った写真あるじゃん?」
「ああ…お前バカみたいに撮ってたな」
「リヴァイさんに無理やりカチューシャつけておそろいで撮ったやつ。」
「あのクソ寒い写真か」
「私あれをスマホのロック画面にしてるんだけど」
「オイふざけんな」
「それを今日エレンたちに見られちゃったんだよね。あはは、ごめんね」


同じ大学で仲のいい友達のエレンやジャン達に、たまたまではあるのだがロック画面を覗かれ、おそろいでカチューシャをつけてるツーショットを見られてしまった。
リヴァイさん(私達にとって先輩)とはみんな面識が普通にあるし、彼を知っていればそういう類のグッズを好まないということくらいは安易に想像出来るだろう。
しかもどちらかと言えばリヴァイさんは親しみやすいタイプではない、というかむしろ怖がられてすらいる。目つき悪いし言葉づかいも悪いし喧嘩がめっちゃ強いからだな。だからファンタジーな世界で彼女と一緒にカチューシャをつけて写真を撮っている(しかも驚くほど似合っていない)先輩の姿は相当面妖に映ったのだろう。驚きのあとに笑いが込み上げてきたらしく、凄く盛り上がっていた。

その時のことを思い出し私自身も軽く笑いながら謝ると、リヴァイさんの目が仄暗い色へと変わった。ような気がした。


「てめぇ…あんなクッソ寒い写真ロック画面になんか設定してんじゃねえよ。ふざけてんのか?」
「だってあの写真すごく好きで」
「今すぐ変えろ。」
「え〜やだぁ」
「あれは、あの時お前がガキみてぇにいつまでもうるせえから仕方なく嫌々撮ったんだったな?」
「そうですね」
「つまり俺はあの写真を気に入ってるわけねえってことは分かるな?」
「なんとなくは」
「だったらロック画面に設定してんじゃねえよ」


改めて見てみようと思いスマホを取り出しロック画面を見てみるとそこには仲良くお耳をつけてる私たちの写真。私はとても嬉しそうで、その隣のリヴァイさんは真顔だ。いや真顔どころかちょっと嫌そうな顔をしている。


「あはは、この写真ほんといい写真ですよね」
「お前の目は節穴か」
「だってリヴァイさんが私のわがまま聞いてくれたんだもん。嬉しいよ」
「てめぇが死ぬほど駄々こねたからだろうが」
「ごめんね。でも一緒につけて撮りたかったんだもん」
「許さん」
「大丈夫だよ〜可愛いから。このリヴァイさん」
「全く大丈夫じゃねえし可愛いわけもねえ。」
「そう?わたし的にはこのリヴァイさんめちゃくちゃ可愛いしめちゃめちゃ愛しいしはちゃめちゃに好き。」


スマホを傾けてロック画面をリヴァイさんに見せると、眉間のシワをよりいっそう深くさせた。


「変えろ。今すぐ、変えろ。」
「え〜じゃあホーム画面にするか…」
「その写真を何かに使おうとするな」


ダメ?と言うと、ダメだ。とキッパリ言われた。強い口調だ。
まぁ、私も、ちょっとした悪戯心というか。リヴァイさんが見たらどんな反応するかな〜と思ってふざけてやったところはあったし。この写真が好きなのは本当だけど、やめろと言うのなら、やめようかな。

私は指紋認証をしてからアルバムをタップする。


「仕方ない。じゃあこの写真は諦めて、昨日撮ったリヴァイさんの寝顔写真をロック画面にするか。」
「ナマエお前喧嘩売ってんのか?」


青く晴れた空の下、昨日撮ったばかりの貴重なリヴァイさんの寝顔写真は本人の手によって消去されてしまい、私の叫び声が帰り道に響いた。


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