仕事が休みの日曜日の朝。リヴァイの家のベッドの上に二人。カーテンの隙間からは太陽の光が僅かに見える。今日は天気が良いらしい。あったかそうだ。


「リーくん、リーくん。」
「…うるせえ」
「リーくん、わたしフレンチトースト食べたい」
「あぁ?」
「食パン余ってたでしょ?フレンチトースト食べたいなあ。」
「勝手に作って食え」
「リーくんの作ったフレンチトーストが食べたいんだよ」
「まずそのふざけた呼び方をやめろ。」
「リヴァイ。」
「自分で作って食え。」
「えぇ〜?」


今日先に目を覚ましたのは私の方で、まぶたを開くとすぐにこっちを向いて眠っているリヴァイの顔が視界に入った。それを暫く見つめてから、そうだ寝顔を盗撮しようとスマホに手を伸ばしカメラを起動した瞬間、彼もまた目を覚ましてしまい瞬時にスマホを奪われてしまった。
おはようの挨拶よりも先に咎められた私は、だって可愛かったからと言い訳をすると、眠っていた時とは打って変わってこれでもかっていうくらいに眉間にシワが寄せられた。可愛いわけねぇだろ、と不機嫌そうな顔が強く主張している。しかし起きている時の仏頂面に比べると寝顔が可愛いとすら感じられるのは事実なのである。

そんなやりとりのあとに、ベッドの上でそのまま冒頭の会話へとなった。


「リーくん」
「やめろ、何なんだその呼び方」
「かわいくない?」
「腹立たしい。」
「うっそだあ」
「なら、俺がお前のことをナマエちゃんと呼び始めたらどんな気持ちだ?」
「きしょくわるううう!」
「…それと同じだ」


普段、お前とかてめえとか言ってる人がいきなりちゃん付けで呼んできたらそれはホラー以外の何物でもないだろう。

くだらないやりとりに笑い、ごろんとうつ伏せになって抱きしめるように枕の下に両手を回しリヴァイの方を見ながらそれに頬を押し付ける。リヴァイは肘を曲げて、片手で頭を支えながら顔をこっちに向けている。


「…ふ、」
「なに笑ってる」
「……いや、」


目を細めながら、片方の手をぴょんと跳ねてるリヴァイの髪に触れる。


「リヴァイって大人しく寝てるわりにいつも寝癖すごいよね」


ぴょんぴょん跳ねてる髪をふわふわと触っていると、真顔でギュッとその手を握られた。


「鬱陶しい」
「いたいいたい。力つよい」


ぺいっと投げるように手を離されて、仕返しにほっぺをぐいっと抓ってやった。


「女の子には優しくしろぉ」
「あ?女の子って歳じゃねえだろ」
「失礼だな。そうだけど」


頬を抓ったついでにそのまま手のひらでさわさわと顔を触っているとそれもまた手首を掴まれてやめさせられた。大人しく手を引くとリヴァイは自身の手で支えていた頭をゆっくり下ろして、少し眠たそうに瞬きをする。


「もうちょっと寝る?」
「…いや」


目を合わせたまま、特に何も言わないでいると今度はリヴァイの方が私に手を伸ばしてきて、ゆるりと毛先を触って遊び始めた。
最近仕事が忙しくて少し疲れていたけれど、こうやってリヴァイといるだけで疲れがとれていくみたいだ。

ああ、やっぱり起きた時に好きな人が側にいるっていいなあ。


「…寝ちゃったらもったいないよね」


ひとりごとのように呟きながらもぞもぞと動いてもっとリヴァイに近づき、ぐっと体を寄せた。するとリヴァイの方も私にすり寄るように顔を伏せる。

あったかいなぁ。


「もう少ししたら、朝メシ作るか」
「フレンチトースト?」
「…仕方ねぇな」
「んふふ、やった」


リーくん大好き、と笑いながら言えば、次またその呼び方したら口塞ぐぞと言われ、唇で塞がれるならぜひともされたいなあと思った。


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