「いやぁ〜…春だねえ」
「年寄りくせぇな」


春らしい柔らな風が吹いて、ちょうど近くに咲いていた桜の花たちが肩を並べて歩く私達の頭上で優しく音を奏でながら揺れた。
いつも通りのリヴァイの悪態も花たちが揺れる心地の良い音に上書きされ(慣れているというのもあり)、全く気にならず私の頬は綻ぶ。


「わあ、桜が降ってきた」


風に揺られてそのままふわふわと落ちてくる桜に思わず手を伸ばすが、するりと指の間をすり抜けていく。取れそうで取れない。
一歩二歩と前に出て桜を掴むことに夢中になっていると、「何してんだ」と後ろから声がした。


「難しい!取れない」


振り向けば、そっと開いた手のひらに花びらを乗っけたリヴァイが桜の舞う中に立っていて、なんだかまるで映画のワンシーンのような綺麗な瞬間に思わず見惚れてしまう。


「こんなもん、目で追ってりゃ簡単に取れんだろ」


そう言ってこちらに一歩二歩と近づいてきたリヴァイは目の前で足を止めると、その桜の花びらを私の方に差し出してくれる。
なんだか少しハートのような形をしているなと思った。


「…ふふ、ありがとう」


それを受け取り、潰さないように柔らかく手を握りしめて笑顔を彼に向けると、私を見るその目は少しだけ眩しそうに細められた。


「早く、帰るぞ」


そのまますっと目を逸らしたリヴァイはそれでも私を置いてきぼりにするわけでもなく、腕を私の首に巻きつけながら歩き出し、私は軽く引きずられながらもそのまま方向転換をして歩き出した。

青い空と、麗しい桜の中を二人で歩く。


「春だねえ、リヴァイ」
「そうだな」


繋いだ手の中に、桜の花びらをひとつ。


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