閉め切ったカーテンはもう暫く開いていない。朝でも夜でも関係なく閉まっている。そして他と比べればそれなりに広い家の、その中にある一室の中に閉じこもりなかなか顔を出さない。外へはもちろん出ない。なぜなら周りの目が気になるから。


薄暗い部屋の中で、一人。

とても限られた小さな世界の中で生きている。







( ナマエ )



久しぶりに誰かに触れられているような気がして、眠っていた体が僅かに反応する。

眉根を寄せ、毛布にくるまろうとする。


まだ眠い。もっと眠りたいのに、それでもなぜか頬に温もりを感じる。



………気に、なる。


なに?私の頬に触っているのは誰?

誰か居るの?

……いや…、でも…そんなことは、ありえない。だってこの部屋に入ってくる人なんてそうそう居ないし、そもそも今家には誰も居ないはずだ。


きっと気のせい。それか夢だ。

ああそうか。夢だ。夢しかない。


もう少し寝よう。



「………」



だからきっと、この感触は。



「……… 」



夢……だよね?



「………、」



──いや、ちが、う、?



「ッ!?」


息を吸い込みガバッと勢いよく起き上がり、明らかに何かが頬に触れる感触にビクリと体を震わせながら目を覚ました。


「何ッ!?」


思わず上ずった声を上げればそいつは手を引く。


「…っ…!?」


確かに、そこには誰かが立っていた。


──え、誰っ、

薄暗い部屋の中と寝起きの目と頭がうまく働いてくれない。だけどボヤボヤとした視界は次第にちゃんと目の前の人をハッキリと映し、そしてその顔を見て私は目を見開く。

彼も私を見て驚いた表情をしていた。


こ、この人───




「……誰!?」
「お前……誰だ?」
「誰なの!?」
「……ここは、どこだ?」
「っふ、ふ、ふしんっ……不審、者…っ!?」
「…不審者?……どこだ?」
「いやあんただよ!!」


キョロキョロと部屋を見渡すそいつに、心臓がドクンドクンと力強く鼓動する。その音に、思い出すように私は生きていることを実感した。


だけど。


「(セ、セキュリティーは、どうなって……)」


体中に響き渡るほどの心臓の音に息を詰まらせる。

私は、もしかして。


「(ここで、…死ぬ…の?)」


この人は、

泥棒?殺人鬼?変態?──殺される?


唐突な見知らぬ男の登場に、頭の中で微かに死を覚悟する。14歳。学校に行っていれば中学二年生。私はこれから殺されるのだろうか。道端で連れ去られる事件が多いはずなのによりにもよって引きこもりの私がこんなことになるとは。


「オイ……お前」


その人の瞳は容赦なく私を捉える。


「………、」


その瞳に、顔に、胸がドキドキと高鳴っていく。


「ここは…どこなんだ?俺はどうしてこんなところに居る?さっきまで……、」
「っ……」
「……お前…… お前は、何だ」


目が離せない。

一体この人は、誰なんだ。


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