部屋着に着替え灯りをつけたままリヴァイはベッドに横になり、私はソファに座った。 この、微妙な距離。今や同じベッドで寝る事がなくなった私達の関係。この一線は、いつか越える事が出来るのだろうか。 置いてあった本を静かに読みながら時間を潰す。気になるだろうから本当は一人にさせてあげたいんだけど、私が居なくなったらまた仕事をし始めそうでこの部屋を出られない。疲れは絶対溜まってるはずなんだから。ちゃんと休んでほしい。 私は何も手伝ってあげられないし、代わりにしてあげられる事もない。 「……」 思わずため息が出そうになる。読みかけの本を閉じ、テーブルに置く。あれからそれなりに経ったけど、ちゃんと眠れてるのかな? なるべく音を立てずに近づき様子を見る。無理やり寝かせたけど、どうやら眠れたみたいだ。寝息が聞こえる。 「(…でも、なんか、疲れた顔のままだし。)」 ベッドの側にしゃがみこみその顔を見つめる。 リヴァイの寝顔なんて、久しぶりに見た。なんとも言えない気持ちになり胸の奥が少し疼く。 無意識のうちにその髪に手を伸ばし、撫でた。すると小さく声を漏らし少しだけ表情が和らいで昔みたいな顔になった。 「…ばーか。」 寝ている時は素直だ。そんなリヴァイに思わず口元が緩む。 「……って、何…してんの」 ハッと我に返り手を引いた。 何してるんだ、私。起こしてしまったらどうするの。何なの。何なの本当。やめてよ。 自分の行動に驚いて立ち上がり一歩引く。もう寝てるみたいだし、部屋に居ない方がいいかも。そっちの方がリヴァイだって休めるよね。うん、そうだよ。出よう。出た方がいい。 一人で頷き、ジャケットを脱いだ。ベッドなのに被るものもなくそのままだから、とりあえずリヴァイにそれを掛けてから灯りを消す。そして静かに部屋を出た。 ◇ 「とまぁこんな感じで今までは巨人に対して…」 「………。」 ハンジの居る部屋に戻ってくると、予想通りまだ話が続いていた。エレンはすでに疲れ切った表情。 「…ハンジ。」 エレンは私と目が合うとハッとして黙ったまま助けを求めてくる。それに気づかないハンジは今も止まらずに話し続けているが、何でこうなると相手への配慮が出来なくなるんだろう。ちなみに私の存在にすら気づいていない。仕方なく背後から近づき、イスを蹴ってあげた。 「うわっ!」 「死ぬまで続けるつもり?」 「…あれ?ナマエ?居たの?」 「ナマエさん…(ありがとうございます)。」 ハンジを止めるとあからさまにホッとした表情になるエレン。 「…エレン、君も何時間も素直に聞かなくてもいいのに。」 「は、はぁ…」 「何言ってるのさ!エレンは聞きたくて仕方がないんだよ!ねぇ?!」 「えっ!?い、いやっ…こんなに長くなるとは…正直…」 「まだまだ半分も話してないんだよ。むしろこれからが…」 「もういいよ。長いんだよハンジの話は。」 「短くまとめるなんて無理に決まってるだろ?」 「なら話すな。」 「いいじゃないか!」 「よくない。付き合わされるこっちの身にもなれ」 「ナマエは付き合ってくれないじゃないか」 「エレン、もう行っていいよ」 「え、でも」 「そういえばリヴァイは?一緒じゃないの?」 「……リヴァイは寝てる。」 「そうなの?ならナマエも一緒に寝てくればいいじゃないか!寄り添って!」 「ふざけてると殴るよ?」 「ふざけてなんかいないよ。大真面目さ」 「だとしたら頭がおかしい。知ってたけど」 「…あ、あの」 「…ん?」 新兵の前でこんな事言うなんて一発殴ってやろうかと思っていると、エレンが口を開いた。 「聞いていいですか」 「なに?」 「リヴァイとナマエなら付き合っていないよ?今のところ」 「え」 「ハンジ…その口削いであげようか?」 「でも二人とも好き同士なんだよぉ?」 「エッ」 「オイクソメガネ!!!」 「っ?!」 「おっと、危ない!あはっキレた!」 「避けんな!殴らせろ!ふざけんな!」 「うはははっ、怖い怖い!」 「二度と口が聞けないようにしてやる!!」 「(ちょ、何この人達…)あ、あの、」 「ほら、エレンが何か聞きたがってるよ!」 「知るかっ!!私はリヴァイのこと嫌いだって言ってるでしょ!?」 「だからそれは設定だろー?」 「違う!!!新兵の前で変な事言うな!!誤解されたらどうする!!」 「誤解も何も、真実じゃないか」 「エレン!!」 「はっはいっ!?」 「このメガネの言ってる事は気にしなくていいから!!ていうか気にしたら殴る!!」 「ええっ?!」 「必死だなぁ…ア痛っ?!」 「黙れメガネ。…エレン、分かった?」 「は、はい…。」 「誰かに言ったりしたら…分かってるね?」 「…ハイ……。」 「なら良し。で、何か聞きたかったんだっけ?」 「あ……もう、大丈夫デス。」 「そう」 「そりゃ聞けないよ。殴られそうだもん。」 「…ハンジ、」 「痛っ!?」 口の減らないハンジを殴り、黙らせる。エレンもそれ以上は何も言わなかった。 |