「うああああああもうやだよおおおおお!!!」 「……… 、」 夜も更けた頃、自室で仕事をしているといきなりドアが開いた。 「もういい!!!もうやめる!!ほんとにやめる!!やめてやる調査兵団なんかッ!!!」 座っている俺の胸に飛び込んできたかと思えばいきなりキツく抱きついてきて、叫び散らす。 「………」 「もうっ…絶対、壁の外なんかっ…出ない!何であんな、あんなとこっ……巨人ばっか居る、のに!!みんな死んじゃう、っのに!!」 「………ああ…」 ナマエは涙で俺の服を濡らしながら、調査兵団をやめると言う。 「っ二度と出たくない!!巨人なんか見たくない!!仲間が死ぬとこも見たくない!!っ血のにおいも!!叫び声も!!……っもう、やだ…ッ」 「……。」 「もうダメ……ほんとに無理……リヴァイ、わたし、本気だから、もう……無理なの…っ…、」 「……そうか」 「…これ以上戦えないよ……戦いたくないよ…」 「…ああ」 どんどん声が小さくなりうな垂れるナマエ。 「……家族も…心配してるし………、」 「……」 「調査兵やめたら……安心させられるし…」 「……」 「…だから……だからさぁ……」 「……やめる、のか?」 無理だと言う彼女にそう聞けば、少し黙ったあとにゆっくりと顔を上げた。 「………うん。やめる」 ナマエは目を伏せたまま頷く。 「…そうか」 俺はそれを特に止めるわけでもなく受け入れ、涙で濡れた下瞼を指でなぞり、髪を撫でる。 それから少しは落ち着いた様子のナマエを見て、口を開く。 「……寝るか?」 「………うん…寝る」 「なら立て」 「………リヴァイも、一緒がいい」 「ああ。分かってる」 仕事の続きはまた明日にすることにして二人で立ち上がる。そしてそのままベッドに入った。 ナマエは不安そうに眉を下げたまま俺にすり寄って、暫くすると寝息を立て始めた。 ちゃんと眠ったことを確認してから、小さく息を漏らし同じように俺も目を閉じた。 ◇ 「……おはよう…リヴァイ…」 「ああ、おはよう」 朝日が昇るとナマエは目を覚ましむくりと起き上がる。静かなベッドの上で向き合いながら黙ってナマエの顔を見つめていると、ごしごしと目を擦り、そして口を開いた。 「……ごめんね、昨日」 「いや、別に」 「……… 、」 「…スッキリしたか?」 「………うん。…ほんと、ごめんね…いつも…」 ナマエが昨日のように調査兵をやめると言うのは、たまにあることだった。 「ハァー……もう、やだ。何でリヴァイに迷惑かけちゃうかな……」 「俺は気にしてない」 「………でも、情けなさすぎる」 「いいじゃねぇか」 「よくないよ……。」 「………」 ナマエはがっくりと肩を落とし気分を沈ませる。俺はそれに手を伸ばして、頬を親指でひと撫でし目を合わせる。 「……まだ、やれるか」 「………、」 そう問えば、起き抜けの瞳が真っ直ぐに前を向いた。 その時いくら本気で「やめる」と言っても、それでも本当にやめたことはない。全部吐き出して泣いて眠り、そして目を覚ませば。 「…うん。まだ、やれる」 ナマエはまた、前を向ける。 「……そうか。」 「続けるよ……。ちゃんと、戦いたい」 「…ああ」 「リヴァイと、一緒に」 「ああ」 「まだやれる……大丈夫、リヴァイがいる。自由を、手に入れる。巨人を倒す」 「……」 「………うん。大丈夫みたい」 「…そりゃ良かった」 「ごめんね……ありがと」 力を取り戻したその瞳に安堵し、気にするなという言葉の代わりにそのままナマエの額に唇を押し付けた。 ツライことや逃げ出したくなる気持ちは誰にだってあるはず。 だが。 いつだって、お前の涙は俺が拭ってやる。弱気になった時は側に居てやる。 ──だから、これからも。 「一緒に戦おう」 いつか自由を手に入れる、その日まで。 |