ポンポンと、後ろから肩を叩く。

するとこっちへ振り向いた彼の頬へ、私の人差し指がちょこんと突きささった。




「……ふは、リヴァイ。こんにちは」
「………、」


子供のように笑う私とは反対にリヴァイは眉を顰める。


「何してんだ」
「いたずら?」


向き直るリヴァイから手を下ろし、笑顔のままでいると少し呆れた顔をされた。


「…買い出しか」
「うん、リヴァイも?」
「ああ」


買い物の途中、街中でリヴァイの姿を見つけた私はいつかみたいに声を掛けた。


「 明後日、楽しみだね」
「……ああ…、」


そして先日約束をしたその日のことを口にする。


──今度の休み、どこか出かけねぇか

そう言ってリヴァイが誘ってくれたそれの日時を、この前お店に来てくれた時に決めた。
それが楽しみで、何日も前から私はわくわくしていた。


「ふふ」
「………、」


それを隠すことなくニコニコと心をそのまま映せば、リヴァイも次第に表情を緩める。


「…お前は、本当に花みたいに笑うな」
「…ん……… ん?」
「俺は今でも…白い花を見ると、お前を思い出す。あの頃からずっと」
「………へ 」


リヴァイの瞳は私を映している。


「お前は今もキレイだ」
「………… 、」


──キレイだと、今の私に向かってリヴァイはそう言った。

いきなり、真正面から。



「 ……ッ 、」


その発言にまるで音が聞こえてきそうなくらいに思わずぼんっと顔を赤くし、私は目を逸らして顔を下へと向ける。


「(ちょ、な、ええー、っな、何それ、いきなり何、なんなの、何、どうした、リヴァイどうした、い、いい…いみが)」


そんなこと、いきなり。


「…は、何赤くなってんだよ」


いみがわからない。


「っ…り、リヴァイ、が、いきなり、変なこと、言うから、でしょ…」
「…別に変なことじゃねぇと思うが」
「や、やめてよはずかしい」
「お前は最近面白いくらいにコロコロと表情を変えるな。悪くない」
「…面白がらないでもらっていいですか……」


顔を赤く染めたままじろりと睨めば、楽しそうにふっと笑われる。


「…っもう、やめて。いいから。そういうの。本当。からかわないで」
「からかってねぇよ。」
「………。だから……、」


やめてってば。


「お前は意外と、照れ屋なのか」
「…誰だってこんなこと言われたら照れるって……」


それでなくても、リヴァイの言葉は以前よりも心に響くのだから。

私は自分を落ち着かせるようにゆっくり息を吐き、すっと顔を上げる。


「そんなことより、今日は何買うの?」
「話逸らしたな」
「 な、うるさイっ、」
「ふ、……今日は掃除道具を買いにきた。」
「……。掃除道具って……箒とか?」
「ああ」
「 ふーん…」
「お前は何を買うんだ?」
「………私も、新しいぞうきん、欲しいかも…」
「ぞうきん?」
「うん。ついでに買ってこうかなぁ」
「……そうか。なら、一緒に行くか」


私がそう言うとリヴァイは歩き出し、それにつられるように私も足を進める。


「うん、」


隣に並んで思わず頬を緩めれば、それを見たリヴァイも表情を緩めた。





「何それ?三角巾?買うの?」
「…ああ。これがなきゃ掃除は始まんねぇからな。」
「……なに、大掃除でもするの?」
「いや、ただの掃除だ」
「……普通の掃除で三角巾するの?…てかっ…え?何、リヴァイそんなのつけて掃除してるの?っふは、それちょっと面白いんだけど」
「別に面白くねぇよ。汚れない為だ」
「あははは、そっか」
「何がおかしい」
「いやおかしいっていうか似合わないっていうか想像すると面白いっていうか?でもちょっとかわいい気もする」
「…言ってろ」
「あはは、ごめんごめん」


二人でお店に入り掃除道具を見て買って、時間で言えばそんなに長くはなかったけど、でもリヴァイと一緒に買い物をするのは楽しかった。
リヴァイの掃除へのこだわりを聞いたり、三角巾までつけて掃除をしていることを知った。だいぶ綺麗好きらしい。




「…そろそろ、俺は戻る。」
「うん。私も他のものを買って帰るわ」


そしてお互いに掃除の買い物を終え、お店を出て向き合う。


「また明後日な」
「…楽しみにしてるね」


思い出したようにまた頬を緩めれば、リヴァイは足を一歩引く。


「寝坊すんなよ」
「ふ、…リヴァイもね」


そして手を振る私にくるりと背中を向けた。



「(……早く明後日にならないかなぁ)」


それを見送り、私も向きを変え歩き出す。


「……」


──このワクワク感は、なんだかあの頃みたいだ。
リヴァイと別れた直後にもう次のことを考えていた、あの頃と同じ。


「………、」


大人になっても私はリヴァイと会うことに胸を高鳴らせている。

本当に、あの頃と変わらない。

…なんか変な感じ。

リヴァイとまた会えて、こうして一緒にいられるなんて。
私の見る景色にリヴァイがいるなんて。


「(ほんと変な感じ)」


改めてそれを実感すれば、キュンと胸が音を立てる。


「………、ふふ 、」


──だけどこれは、子供の時にはなかったものだな。

私はそれを愛おしく思い、そしてあの頃以上にリヴァイを想った。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -