「ナマエ!おはよう!」
「…ハンジ。おはよう」


翌日、食堂で遅めの朝食を一人で食べているとハンジが隣に座ってきた。


「眠そうだね?」
「…ハンジは元気だね。」
「あ、そういえばリヴァイ達もう行っちゃったみたいだね。見送った?」
「見送らないよ別に」
「いいのぉ?離れちゃうのにさー。寂しくないのぉ?」
「…別に寂しくないし。」
「ははっ!強がるねー!」
「…メガネ割ってもいい?」
「いやいやダメだから」
「朝からイラつかせないでよ」
「だってナマエはリヴァイと一番付き合い長いからさぁ」
「…別にずっと会えないわけじゃないんだし。」
「じゃあ、ずっと会えなかったら寂しい?」
「その質問に意味ある?」
「もちろんあるよ!」
「ねぇよ。」
「あるある!ナマエがどれだけリヴァイを好きなのかなって!」
「ちょっとメガネ貸して?綺麗に割ってあげる。」
「ダメダメダメ」


ソニーとビーンの実験で疲れているはずなのにハンジは朝からうるさい。目の前の朝食に手もつけずにずっと話しかけてくる。

リヴァイは今日から旧調査兵団本部とやらに行ってしまった。別に寂しくはない。それに会いたいと思えばどうせすぐ会いに行けるだろうし。いや別に会いたくなるわけではないんだけど。


「リヴァイなんか、嫌いだし…」
「あー、そうだったね。そういう設定だったね」
「設定とか言うな!」
「はははっ」
「…あーもうハンジやだ。どっか行って。メシがまずくなる」
「んー?私のこと嫌いなの?」
「キライ。」
「それも設定? 」
「設定違う。」
「でもそんな事言うけどさぁ、私の班に入りたいって駄々こねてたのは誰だったかなー?」
「……こねてない。それにハンジの班に入りたかったからじゃないし。分かってんでしょ」
「だって、わざわざ私のとこじゃなくても良かったでしょ?なのにナマエは一目散に私の班を選んだじゃないか!」
「一目散の使い方間違ってるよ。私はリヴァイの班以外ならどこでも良かったの。たまたまそれがハンジだっただけ」
「本当、素直じゃないよねぇ。ナマエは」
「…うるさい。」
「まぁそれはリヴァイも同じかー」
「……」
「だから困っちゃうんだよねぇ。この二人は…」
「…ハンジ、」
「ん?…あっメガネ取んないで!」
「壊してほしいんだったら最初からそう言って」
「壊してほしくないから!」


たまに本気でイラッとする事があるけど、ハンジとの付き合いもそれなりに長くなってきて今となってはこれでも大分心を許している。言わないけどハンジの班に入ったのも、ハンジなら私の気持ちを分かってくれると思ったからだ。言わないけど。ハンジには言わないけど。


「いやもう本当に言わないけど。」
「え、なに?」
「…早く食べないと冷めちゃうよ。」
「おっとそうだね。せっかくなら一緒に食べたいしね。」
「ごちそうさまでした。」
「ちょっ 食べ終わったの?」
「ハンジが一人でぺらぺら喋ってる間にね。」
「私はナマエと話してたんだけど?君も返事してたよね?」
「あれはひとりごと。」
「さすがにそれはちょっと無理があるね」
「うるさい。」
「もーリヴァイが居なくて寂しいからって私に当たらないでくれよ」
「だから違うって言ってるでしょうが。目ぇ潰すよ」
「リヴァイに会ったら言っておくね。ナマエが寂しがってたって」
「………」


三年間の訓練も受けずにいきなり調査兵団に入った信用すら出来ないあの頃の私達に、分け隔てなく話しかけてくれたハンジ。私はそれに戸惑いながらも本当は嬉しかったのかもしれない。

だからこうして今、メガネを叩き割れるくらいの関係になれた。


「私のメガネが!!」


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