「てめえ今何時だと思ってんだよぶちころすぞああ!?」 「…………。」 すげーキレてる。 「来るの遅すぎんだろ!!?」 「うん……ごめんて」 「ごめんで済んだらサツはいらねえんだよ!!!」 「……いや、とりあえずリヴァイくん。落ち着け?な?そんな大声だすなよ……頭に響く」 「今日は起きたらここに来るってゆー約束だっただろうが!!!なのに何時まで寝てんだよ!?」 「…だから、約束通り起きてからすぐに家でてきたんだけど」 「いや遅すぎだろ!!!もう1時だぞ!?何時まで寝てんだよふざけんな!!」 「……つーかお前は何時にここ来たわけ?」 「おれは8時過ぎにはもう居た!!」 「はちじ!?はやッ!!お前私と遊ぶのどんだけ楽しみにしてんだよ!」 「ちッ……げぇーよ!!おれはこの公園が好きなんだよ!!」 「あ、そーなん?へー」 「ッ……とにかく!!おれは朝からずっとお前を待ってたんだよ!!土下座してあやまりやがれ!!」 「は、死んでも嫌だけど」 「あァ!?」 「そもそもお前が起きるの早すぎるんだよ……」 「7時起きは普通だよクソビッチ!!」 「いやいや……園児なんて、3時くらいまで寝るもんじゃないの?」 「寝すぎだろ!そんなに寝たら体くさるわ!!」 「いや腐りはしねーだろ……。」 目の前で叫び散らすガキはどうやら怒りが収まらないご様子。 リヴァイとその約束をしたのは一週間前の土曜日のことだった。 というのも私は最近友達と遊んだりバイトに行ったりでなかなかリヴァイを構ってやれていなかったのだ。その間も一人でここへ来ていただろうこいつのことは気になってはいたけれど、しかし私のJKライフもそれはそれで大切なので最近はそっちを優先してしまっていた。 だから一週間前にたまたま会えたリヴァイとその時約束をしたのだ。『来週の土曜日、起きたら公園に集合』と言われ、私はそれに頷いた。 でもさ。そんな早くから居るとは思わないじゃん? ねえ? 「まぁでも8時から居たんじゃそりゃあ待たせすぎか……まさかそんなに早くから居るとは思わなかったマジで。ごめん」 「………っどうせ昨日遅くまで親父狩りでもしてたんだろ!だから起きれなかったんだろ!」 「いやしてねーよ。親父狩りってお前」 「おれはっ……忘れられたのかと、思ったんだからな……っ!」 「………、」 眉根を寄せて拗ねたようにそう言うリヴァイに、悪いことしたなあとわりと真剣に思う。 「…うん、ごめんって。許せ」 頭に手を伸ばしそこを撫でながら謝ると、手を払われた。 「やめろバカ!悪いと思ってんなら態度でしめせ!」 「分かった分かった。じゃーコンビニでも行くか?なんか好きなの買ってやるよ。ちょうど私も何も食べてなかったからお腹空いたし」 「お前こんな時間なのにまだ何も食べてねぇのかよ!?」 「だから、起きてすぐに来たって言ってんだろが」 目が覚めて時計を見た時、針が12時30分を指していて少し焦った。リヴァイは11時くらいにはもう来ているかなと予想を立てていたから、だから起きてすぐ着替えてここに来たのだ。まぁ実際は8時にはもう到着していたみたいだけど。さすがに早すぎ。 「てかあんなアバウトな待ち合わせじゃなくてちゃんと時間を指定しとけば良かったわ。悪い悪い。コアラのマーチ買ってやるから、それで許せ」 「何勝手にコアラのマーチに決定してんだよ!選ばせろ!」 「あーはいはい。じゃあ行こ」 「………っ 」 そう言って私は歩き出し、公園を出て行こうとする。だけどなかなかついてくる気配を感じれず、足を止め振り向いてみるとリヴァイはそこで突っ立ったまま動こうとしない。 「…リヴァイ?早く、おいで」 「……」 「………、」 口を噤み眉根を寄せ、そいつはさっきまでの表情とは違う顔をしていた。 公園に一人取り残されたようなその姿を見ているとなんとなく心苦しさを感じる。 …ああもう。また、そんなめんどくさそうな顔を。 私は息を漏らしリヴァイに歩み寄り、屈んで顔を覗きこんだ。 「どした?」 「………ほんとは、忘れてたんじゃねぇのか」 「え?」 リヴァイは下を向き、自分のズボンをぎゅっと掴む。 「…ほんとはもっと早く起きてたんじゃねぇの」 「………、」 「でもおれとの約束なんか、忘れて…」 「──だから、違うって。」 その言葉を遮り、否定する。 何でこう急にネガティブになるかな。こいつは。 「……、」 「本当にさっきまで寝てたんだって。忘れてなんかねーよ。」 「…………でも、ずっと来なかったじゃねぇか」 「ずっと?……あぁ、最近のこと?…まぁ確かに来れてなかったけど……でもそれはリヴァイのことを忘れてたからとかじゃないし。他にもいろいろあるんだよ、JKにはさぁ……お前と違って友達も居るし」 「…いろいろって、なに、それ。親父狩りとかか?」 「だからちげーっつの。お前の中の私はどういう人物像になってんだよ」 「だってお前……クソビッチだし……」 「まずその大前提がおかしいからな?別に私ビッチじゃないからな?……ていうかさ、お前とは約束したはずだよね?」 「………なにが」 「『これからもずっとお前と遊んでやる』って。言ったろ?」 「………」 「私はこう見えても約束は守る系女子だぞ?」 「………今日の約束も守れなかったやつが?」 「いや別に今日のはやぶったわけじゃねぇだろ!ただ起きるのがちょっと遅かっただけで……てか起きたら集合って言い出したのはお前だろー?そんなにいつまでもねちねち言うくらいなら、次からはちゃんと時間を指定しろ。それだったら分かりやすいでしょ?」 「……うるせえ、説教すんな」 「説教してるつもりねぇーよ。アドバイスだ、アドバイス………まぁもーいいや。とにかくコンビニ行こうって。喉渇いた」 「………。」 立ち上がって歩き出そうとすると、いきなりぎゅっと服を掴まれ踏み出した足をまた止める。 「え、なに」 「おぼえてて」 「、え?」 「…おれのことずっと、ちゃんと覚えてて」 「………、」 その、縋りつくような言葉に思わず思考が止まりかけ、それ以上は何も言わないリヴァイをただ見つめる。そして掴まれているその手にゆっくりと視線を落とした。 何も考えずに私はその手をパッと取り、するとリヴァイは顔を上げる。 「…だから、私は約束は守るって。心配すんな」 ほら行くぞ、とそのまま手を繋いで歩き出した。リヴァイも私に手を引かれ、歩き出す。 何も言わずに黙って歩いていると周りに人もあまり居ないせいか、なんだかやけに静かに感じる。 「………(いや、てか思わず手握っちゃったけど、なんかちょっとこれハズイな)」 しかもお前も振り払わないのかよ、とそう思いながらリヴァイをちらりと見れば目が合い、そして逸らされた。 「………。(ま、いいか)」 若干の照れくささはこの際気にしないことにして、前を向いて歩く。 するといきなり握っている手がぎゅっと握り返された。 「(……… え、)」 その感触にまたリヴァイの方を見ればそのまま少し顔を逸らされる。 「………、」 「……。」 だけど可愛げのあるその行動にふっと表情を緩ませ、そして何も言わずにまた前を向いた。 それからコンビニまでリヴァイの歩幅に合わせてゆっくりと歩いた。 「…あ、そうだ。リヴァイ、たべっこどうぶつ買ってやろうか」 「は?あのどうぶつのビスケット?」 「うん、そう」 「…何でお前さっきからどうぶつ推しなんだよ」 「ガキはそういうの好きだろ?」 「おれカントリーマアムがいい」 「え?なに?聞こえない」 「カントリーマーム。」 「え?」 「だから、カントリーマァ、」 「言っておくけど高いの禁止な。」 「…………。」 |