「もし私が調査兵団に入っていなかったら、私はリヴァイ兵長と出会うこともなく一生誰とも付き合うことはなかったのでしょうか」 二人で向かい合うベッドの中でふと言葉にしたその問いに、目を閉じていたリヴァイ兵長は静かに目を開いた。 「……どうした。いきなり」 月明かりに照らされているこの部屋は薄暗く、だけどかろうじて表情だけは見える。リヴァイ兵長は私の問いに答えることなくそう言った。 「誰とも付き合わない…なんてそんなこと、きっとないですよね。その時私はいずれリヴァイ兵長以外の人を見つけ、そしてその人と想いを重ねるんだと思います。何の疑問も持たずに」 「………、」 「そうなればリヴァイ兵長もきっと私以外の人を見つけその人を真剣に愛すのでしょう……私達は一生出会うことも互いを知ることもなく、今とは違う人を真っ直ぐに愛して生きていくんです」 今こうして私はリヴァイ兵長以外の人なんて考えられないのに、でもそれも出会っていなければまた別の人に対してそう思うのだろう。ならば相手は誰でもいいのだろうか。 もし──もしも。 「…たとえば私が次の壁外調査で帰ってくることが出来なかったら、リヴァイ兵長はいつか私への想いをなくし、他の誰かを愛すのでしょうか」 その手で、体で、心で。唇で、言葉で。私の居ない世界、私の知らない世界でリヴァイ兵長はその人に触れるのだろうか。 今こうして温もりを知れているのに、どうしてこんなにワケの分からない感情に呑まれ不安だけが残されるのだろう。 「……俺は今、お前を愛している。それじゃダメか?」 「………。」 その言葉に私は目を伏せる。 「……もちろん、それだけで幸せです。」 でも。 「ただ…たまに不安になるんです」 好きな分だけじわじわと不安が生まれてくる。ちゃんと大事にしてくれていることは分かっているのに。 「……まぁ、気持ちは分からんでもないが」 するとリヴァイ兵長はそっと私を包み込むように腕を回し、自分の方へと抱き寄せる。 「……こうしていれば、少しはマシになるか」 「………、は い …」 温かいリヴァイ兵長の想いと体温に包まれ、私の気分は少しだけ落ち着く。 そこで目を閉じゆっくりと息をした。 「出会ってなかったらとか、帰ってこれなかった時の話なんかするな。寂しくなるだろうが」 「………ごめんなさい、」 「そんなことを考え不安になることに何の意味がある?」 「……そう、ですよね……」 ああ、本当に。全く意味がないのに。 「…めんどくさくて、ごめんなさい」 「ああ……そうだな。面倒だな」 「………(肯定、された)」 こういう話、嫌いそう。 私は自分の気持ちに眉を顰めた。 「まったく面倒で……愛しくなる」 ずっと一緒に居たいのに、こんなバカなことを言って、さぞかし面倒だろう。 「……え?」 「……」 だけどそんな中聞こえてきた言葉に思わず顔を上げる。すると目が合った。 「な、…んで、愛しくなるんですか」 面倒なのに愛しいだなんて。聞けばリヴァイ兵長は表情を緩める。 「…意味なんかねぇよ。」 そして更に私を抱き締め、顔をうずめてきた。 「お前を愛してる以外の意味なんて、何もない」 「…………。」 (私のこの面倒な想いの奥に何があるのか) 「……リヴァイ兵長…、」 彼はそれを知っている。だからそんなふうに優しい声をしているのだ。 ──ああ、そうか。 私はリヴァイ兵長の服をきゅっと握った。 「好き…です、大好きです……愛してます」 答えは全部、愛に繋がっている。 「…知ってる」 それを理解し優しく受け止めてくれる彼の想いもそう。 私はその想いに包まれ、温かい腕の中でそのまま眠りについた。 これからもずっとリヴァイ兵長の隣に居られるように、夢見ながら。 |