私は、リヴァイが好きだった。

地下で初めて会った瞬間から、私は彼にどこか惹かれていた。そしてそれはきっと彼も同じだったはず。口にはしていなかったけど、互いにそう感じていた。共に過ごす中でどちらともなく体を重ねた事もあった。それまで、生きる事に何の意味も見出していなかった私は彼と居る事でそれを感じていた。

調査兵団に連れて来られた時も、そこで生きていくと決めた時も、私の思いは一つだった。



「…え、リヴァイ本部から離れるの?」
「ああ。旧調査兵団本部に拠点を移す。俺の班員とあのガキを連れてな。」
「ふーん…大変だね。兵士長さんは」
「まぁ俺が適役だからな。」


リヴァイはいつの間にか兵士長とかいうのになっていてそれなりに忙しくしている。私はというとハンジのただの部下。ハンジも気づけば分隊長になり、エルヴィンなんか今や団長だ。数年でみんな偉くなったものだ。
私は特に何も変わらずただ自分からハンジの班に志願しそこへ入った。


「……。」
「疲れた顔してんな」
「…うん。今日もハンジと実験だったから」
「そりゃご苦労なこった。」
「もっと労ってくれてもいいんだよ」
「それがお前の仕事だろ。」
「…まぁ、私なんかよりモブリットの方が大変だろうけど。ハンジといつも一緒だし」
「アイツの副官だからな」


私がハンジの班に自ら入ったのは、リヴァイとは同じ班になりたくなかったから。壁外調査に出た時にリヴァイの側に居たくないからだった。


「リヴァイ、紅茶淹れて」
「それが人にモノを頼む態度か?」
「…リヴァイ、紅茶を。」
「あ?」
「淹れなさい」
「ふざけんな」
「…お願いします兵士長様。人類最強が淹れる紅茶が飲みたい!」
「てめぇ…馬鹿にしてるだろ?」
「うん。」
「せめて否定しろよ。…ったく」


リヴァイは面倒くさそうにしながらも立ち上がり、二人分のカップを手に取る。私は頬杖をつきながらその後姿を見つめる。こうしていると地下に居た頃と変わってないように思えるのに、そんな事はない。変わってしまったのだ。私たちの関係も、心の距離も。


「ほらよ」
「…ありがとう。いただきます。」
「ああ。」


リヴァイが淹れてくれる紅茶は美味しい。これはずっと変わらないのに。


「おいしい。」
「そうか」
「…その持ち方、ほんと飲みにくそうだよね。」
「……」
「絶対飲みにくい。」
「しつけぇな…癖だと言っているだろうが。」
「心配しなくてもそう簡単に取っ手は取れたりしないと思う。」
「お前に何が分かる」
「…可哀想だとは思うよ。やっとの思いで手に入れたティーカップが目の前で粉々になったら。でもさ、それはその時のカップが脆かったからでしょ?」
「うるせぇ。ほっとけ」
「だってエレンも見たら絶対気になると思うよ。ていうかぺトラとかも絶対気になってるって。」
「そんなもん知るか。」
「ハンジだって初めて見たとき爆笑してたじゃん」
「アイツは大袈裟なんだよ」
「めっちゃ私に理由聞いてくるし。」
「それは良かったな」
「良くない。」


こんなふうにリヴァイと話すのはよくある事。長い付き合いになるけど未だにこうしてお茶をして他愛もない事を話す。

でも、こんなふうにしていても、リヴァイは私に距離を置いている。


「ねぇ、おかわりしてもいい?」
「ああ。」



そして私は今、リヴァイが嫌いだ。


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