「ちょっとリヴァイ…手かして」
「…何だ」


同じ机の上で仕事をしている最中、ふとあることに気がついた。私はリヴァイの手を取りそれを見つめる。


「……つめ、少し長いね。切ろうか」
「…あぁ…そうか」


そう言って一度立ち上がり引き出しからつめ切りを取り出すとまたイスに座る。ギッ、とイスを少し詰めてからまたリヴァイの手を取り彼のつめを整え始めた。

部屋にはその音だけが響く。



「…ん、おわりー。」
「悪いな」
「ぜんぜん。ついでに私もやっちゃおっと」
「……貸せ」
「あ、」


彼よりも伸びていた自分のつめも切ってしまおうとすれば、その前にリヴァイが私の手からつめ切りを奪う。そして同じように私の手を取りつめを切り始めた。


「……」
「……。」


パチンパチンと、その音が響く。


「…こんなもんか」
「…ん、ありがとー」
「痛くねぇか」
「うん、大丈夫だよ」


リヴァイはいつも切り過ぎるクセがある。整えられたそのつめは深爪になるギリギリのところだ。
私の指に触れ、切り終えたつめを親指で撫でながら見つめるリヴァイ。




「……ねえ、素朴な疑問なのだけど」


それまで静かだった隣から聞こえてきたその声に、私はそっちを見る。リヴァイは気にしていないのかまだ私のつめを見ている。


「なに?ハンジ」
「結局お互いつめを切るんなら、最初から自分のつめを切ればいいんじゃない?」


少し呆れたように彼女はそう言った。


「……あはは、愚問だなぁ」


その問いに私は笑い、リヴァイに視線をやる。すると顔を上げる目の前の彼。


「…馬鹿か。少しでも触れ合えるこっちの方がいいに決まってんだろうが」


その言葉に、また私もハンジの方を見つめた。


「……あ、ごちそうさまでーす」


付き合いの長い同僚は私達の答えにやれやれといった顔をする。


「何がごちそうさまだ。勝手にオカズにしてんじゃねぇよ」
「むしろそっちが見せ付けてきたんだよね?」
「ていうかハンジ、いつから居たの?」
「ずっと居たよね!?」
「お前は俺らの邪魔をするのが趣味なのか」
「いや普通にただ仕事してるだけなんですが」
「まったくもう、空気読んでほしいよ」
「え、何それ……私もしかして邪魔だったの?」
「……」
「……」


三人、同じ机で仕事をしているこの空間で私とリヴァイは顔を合わせたのち、ハンジにまた視線を集める。


「「邪魔」」
「………。」


声を揃えて言う私達に、ハンジは机を叩きつけた。


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