「兵長は運命の赤い糸って信じますか?」


運命の人とは、お互いが赤い糸で結ばれているんですよ。


「あ?」


そう言えば兵長はくだらないとでも言うように、少し眉を顰めた。


「赤い糸です」
「……くだらねぇ。」


あ、やっぱり言われた。


「くだらなくないですよ、私は兵長と赤い糸で繋がってるって信じてます!」
「くだらねえ。」
「(二回も言われた!)」


もはや目も合わせてくれない兵長。ソファで何かの書類に目を通している。つまらない。私はそんな兵長へと近づき構ってほしくてそのお膝へとダイブした。というか勝手に膝枕の体勢に入り込んだ。


「……お前…、仕事の邪魔をする気か」
「お気になさらず!」
「気になるだろ。」
「私は兵長が私の運命の相手だと思っていますよ。」
「……どうでもいい。」
「ど、どうでもいい!?」
「ああ、心底どうでもいい。」
「…えええ……」


冷めた目つきで見下ろされ、私は眉尻を下げる。


「兵長は私が運命の人じゃなくてもいいんですか……?赤い糸が他の人に繋がっていても、いいんですか……」


私は絶対に嫌なのに、


「……。」


すると兵長は表情を変えずに、また書類へと視線を戻す。


「そんなもん関係ねぇよ。」


な、なくないですよ。

それを否定しようとすれば、その前にまた兵長が口を開いた。



「もしお前や俺に他の相手が居たとしても、俺はお前しか好きにならない。」


落ち着いた声で、そう言った。


「…………、」


それと反対に私は目を丸くする。


「…ほら、分かったらどけ。邪魔だ」


そんな、そういう、発想は、なかった。


「……へ、へいちょう……」
「あ?」
「…す、好き 」
「………。分かったから、どけ、」
「好きぃいいい!!」
「っ、」


思わず叫びながら上半身を起こし、そのまま首に腕を絡めれば、兵長はため息を吐いた。


「もちろん私だって兵長しか好きにならないですよっ!!」
「……」



それからしばらくぐりぐりと顔を押し付けていると、そのうちいい加減にしろと怒られ、引き剥がされた。

だけどそれでもまた抱きつけば、深いため息を吐いた兵長は諦めたようにそのまま仕事をやり始めた。


うん。赤い糸なんか、なくたっていいや。


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