──あれから、一ヶ月が経った。


私の世界からリヴァイさんが居なくなり、出会う前の平凡な日常へと戻った。

朝起きても隣には誰も居ないし、行ってきますを言う相手も居ないし、おいしい紅茶もお弁当も迎えに来てくれることもなくなった。
それが寂しくないと言えばもちろん嘘になる。でも不思議と辛くはなかった。誰も居ない家に帰ってきても、孤独は全く感じなかった。

さすがにあの日はあのあとずっと泣いていたけど、それからは一度も泣いていない。それは、リヴァイさんを想う度に心が温かくなるからだ。そっとそこに、寄り添ってくれているから。

私の目の前から居なくなり姿が見えなくなって、触れることさえも出来なくなったけど、想うだけで胸が心地よさそうに鳴く。それがなんとも愛しくて、くすぐったくて、穏やかな気持ちになれるのだ。

リヴァイさんとの日々はこれからも色褪せずに、私の中でずっとそこを温かく包み込んでくれるんだろう。





「…もしもしー?」
『あ、ナマエ?』
「どしたのお母さん」
『うん、あのねー』


休日に家で一人過ごしているとお母さんから電話がかかって来て、スマホを手に取った。
話をしながら、それからなんとなく目に入ったベランダへと出て、手すりに寄りかかる。


『─あ、それと聞きたいことがあったんだった』
「なに?」
『リヴァイくんは元気?』
「………。なぜ?」
『だって気になるじゃない。』
「何でよ…気にしなくていいよ」
『どうなの?あれからも順調なの?』
「………、」


その言葉に思わず空を見上げる。

リヴァイさんは今何をしているだろう。誰と居るだろう。私のこと、思い出してくれてるかな?


想い馳せていると、柔らかい風がそっと吹いた。

優しく頬を撫でられ、私は口を開く。



「…そうだね。きっと、元気にしてるよ」


不思議で、おかしくて、奇跡みたいな経験をした。それは今はもう思い出になってしまったけど、でもきっとこの空は繋がっている。
キラキラと輝いて宝物みたいで、そんな日々をこれからもずっと、私は。

私達は、忘れない。


どこまでも続く青い空に、私は口元を緩めた。













「リヴァイー?おーい?…また空見ながらぼーっとしてる。大丈夫?」
「……ぼーっとしてるわけじゃねぇよ。」
「そう? …あ、それ。」
「……。」
「そのペンダントってさ、開けられるんでしょ?何が入ってるの?」
「…お前が知る必要はない。」
「随分と大事そうにしているみたいだけど」


それは太陽の光に反射してキラリと輝く。


「……繋がり、だからな。」



想いをそっと胸にしまって、二人は心を繋ぐ。

空は高く、見守るようにどこまでも果てしなく続いていた。


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