「ナマエ、そろそろ帰る?」
「……え?もう?」
「うん。だって、ずっとソワソワしてる。」
「いやいや、そんな事……(時計チラッ)」
「ふはっ…ほらめっちゃ時間気にしてるじゃん。いいよいいよ。気になるんだろ?」
「………うん。ごめん、ハンジ。」
「いいって。また今度家にでも呼んでよ。おもちゃ持って行くからさ。」
「うん… ごめん、ありがとう」
「今日は会えて良かったよ」


私は笑顔のハンジに謝り別れを告げ、家へと向かい歩き出した。

今日は仕事が休みのリヴァイが「家の事は俺に任せてお前もたまには出かけてこい」と言ってくれたのでそれに甘え、高校の頃からの友人のハンジとランチをしていた。だけど家の事が気になり過ぎて正直全く落ち着かなかった。

今から帰るとリヴァイにメールをして、足を速めた。





「ナマエっ?!帰ったのか?!こいつ全然泣き止まないんだが?!」
「………あ、はは 」


家に着けば、大泣きする愛娘(一歳)とそれを抱きながら右往左往する夫の姿が。


「やっぱり良かった。早く帰ってきて。」
「あ?早くだと…?てめぇ、早めに切り上げてきたのか?家の事は任せろと言ったはずだが」
「いや…それは心から有り難いんだけどさ……」
「今日はこっちを気にせず楽しんでこいと言っただろうが」
「そうなんだけど…でも、(見るからに)大変だったでしょ?」


選手交代。リヴァイからリーベをもらい抱きかかえる。


「バカ言え、掃除は完璧にした。ただリーベがずっとぐずってただけだ。」
「問題はそこだよね。でもありがとう。おかげで楽しかったよ」
「本当か?今気づいたがお前出て行ってから三時間も経ってねぇじゃねーか。もっと羽を伸ばせよ。」
「でも気になって仕方なくて。行く時ですら出てくのバレて大泣きだったし」
「……なぜ俺じゃ駄目なんだ…。父親だぞ、俺は」
「はは……まぁ、母親と比べるとね。」
「クソッ…へこむ…」
「へこまなくていいよ。仕方ないよ」


私が抱いた途端に泣き止み落ち着くリーベを心底疲れ切った顔で見つめるリヴァイ。哀愁が漂っている。ため息を吐きながらソファに寝転ぶ姿を見て、思わず目を細める。リヴァイの足をつめて私もソファに座りその体に触れた。


「ありがとね。」
「……俺は頼りないか」
「何言ってんの。そうじゃないから」
「……。」
「誰に預けたって同じ。気になっちゃうよ。」
「…そうか。」


少し拗ねているリヴァイが愛おしくて顔が綻んでしまう。


「次は家族で出かけよう。ね」
「そうだな。」
「あ、それとハンジが今度家に来てくれるって」
「来なくていい。リーベの教育に悪い。」
「っふ… でもそれを言うならリヴァイだって同じじゃないかな」
「あぁ?俺のどこが教育に悪いって?」
「その、眉間にシワ寄せてる顔とか。態度とか、言葉遣いだとか。」
「そんなもん元気で健康に育てば何だっていいだろ。あとはナメられさえしなけりゃいい。」
「ナメるとかナメないとかじゃないから。もうちょっと言い方考えてよね」


旦那が居て、子供が居て。大好きな家庭がある。
私は世界で一番の幸せ者かもしれない。


…さすがにそれは少し言い過ぎたかもしれない。


でも、人生で今が一番、幸せなことは確かだ。


「リヴァイ、愛してるよ」
「…知ってる。」


私達がキスをする姿をリーベが不思議そうに見つめていて、リヴァイと顔を合わせて笑った。そしてその柔らかい頬に二人でキスを落とした。


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