「ナマエ、そろそろ帰る?」 「……え?もう?」 「うん。だって、ずっとソワソワしてる。」 「いやいや、そんな事……(時計チラッ)」 「ふはっ…ほらめっちゃ時間気にしてるじゃん。いいよいいよ。気になるんだろ?」 「………うん。ごめん、ハンジ。」 「いいって。また今度家にでも呼んでよ。おもちゃ持って行くからさ。」 「うん… ごめん、ありがとう」 「今日は会えて良かったよ」 私は笑顔のハンジに謝り別れを告げ、家へと向かい歩き出した。 今日は仕事が休みのリヴァイが「家の事は俺に任せてお前もたまには出かけてこい」と言ってくれたのでそれに甘え、高校の頃からの友人のハンジとランチをしていた。だけど家の事が気になり過ぎて正直全く落ち着かなかった。 今から帰るとリヴァイにメールをして、足を速めた。 ◇ 「ナマエっ?!帰ったのか?!こいつ全然泣き止まないんだが?!」 「………あ、はは 」 家に着けば、大泣きする愛娘(一歳)とそれを抱きながら右往左往する夫の姿が。 「やっぱり良かった。早く帰ってきて。」 「あ?早くだと…?てめぇ、早めに切り上げてきたのか?家の事は任せろと言ったはずだが」 「いや…それは心から有り難いんだけどさ……」 「今日はこっちを気にせず楽しんでこいと言っただろうが」 「そうなんだけど…でも、(見るからに)大変だったでしょ?」 選手交代。リヴァイからリーベをもらい抱きかかえる。 「バカ言え、掃除は完璧にした。ただリーベがずっとぐずってただけだ。」 「問題はそこだよね。でもありがとう。おかげで楽しかったよ」 「本当か?今気づいたがお前出て行ってから三時間も経ってねぇじゃねーか。もっと羽を伸ばせよ。」 「でも気になって仕方なくて。行く時ですら出てくのバレて大泣きだったし」 「……なぜ俺じゃ駄目なんだ…。父親だぞ、俺は」 「はは……まぁ、母親と比べるとね。」 「クソッ…へこむ…」 「へこまなくていいよ。仕方ないよ」 私が抱いた途端に泣き止み落ち着くリーベを心底疲れ切った顔で見つめるリヴァイ。哀愁が漂っている。ため息を吐きながらソファに寝転ぶ姿を見て、思わず目を細める。リヴァイの足をつめて私もソファに座りその体に触れた。 「ありがとね。」 「……俺は頼りないか」 「何言ってんの。そうじゃないから」 「……。」 「誰に預けたって同じ。気になっちゃうよ。」 「…そうか。」 少し拗ねているリヴァイが愛おしくて顔が綻んでしまう。 「次は家族で出かけよう。ね」 「そうだな。」 「あ、それとハンジが今度家に来てくれるって」 「来なくていい。リーベの教育に悪い。」 「っふ… でもそれを言うならリヴァイだって同じじゃないかな」 「あぁ?俺のどこが教育に悪いって?」 「その、眉間にシワ寄せてる顔とか。態度とか、言葉遣いだとか。」 「そんなもん元気で健康に育てば何だっていいだろ。あとはナメられさえしなけりゃいい。」 「ナメるとかナメないとかじゃないから。もうちょっと言い方考えてよね」 旦那が居て、子供が居て。大好きな家庭がある。 私は世界で一番の幸せ者かもしれない。 …さすがにそれは少し言い過ぎたかもしれない。 でも、人生で今が一番、幸せなことは確かだ。 「リヴァイ、愛してるよ」 「…知ってる。」 私達がキスをする姿をリーベが不思議そうに見つめていて、リヴァイと顔を合わせて笑った。そしてその柔らかい頬に二人でキスを落とした。 |