「どうしてお前はいきなりそんな夢を見たんだ?」
「……あの、リヴァイさん」
「何だ?」
「えっと………それ、テレビです。私はこっちですよ」
「………。」


テレビに話しかけるリヴァイさんは振り向き、私と目を合わせる。


「あの、大丈夫ですか?」
「…ああ。少し、動揺しただけだ。」
「そうですか…」


向き直り紅茶を一口啜った。


「とりあえず状況を整理しましょう」
「ああ。」
「……えっと、確か二次会の途中までは覚えてるんですけど…。」
「…オイ。整理しすぎだ。そこはどうでもいい。」
「え、あ、そうですか」
「お前も落ち着けよ」
「…ですね…。」


私も紅茶を一口飲み、状況を整理する。

まず私の夢にリヴァイさんが出てきた。夢というか実際の映像みたいで、すごく現実的だった。恐らくあれはリヴァイさんが居た世界。日常会話をしているリヴァイさんと、リヴァイさんの知り合いの人たち。断片的に切り取られたリヴァイさんの日常。


「…これって、リヴァイさんの記憶が私に流れ込んできたと考えるのが一番しっくりきますよね。」
「……そうだな。」
「何でいきなり見れたのかと、何の意味があるのかがまだ分かりませんが」
「だが、きっと理由はあるはずだ。何かの手がかりになるかもしれない。」
「そうですね。もしかしたら元の世界に帰れるヒントとかなのかも…」
「…とにかく、もっと他の場面も見れたらいい。」
「でもどうやったら見れるんでしょう…どうやったのか自分でも分かりません。眠るだけでいいなら今までも見れたはずですし」
「……何かいつもと変わった事でもしなかったのか」
「変わったこと……。」


思い出してみる。

目が覚めたら、隣にリヴァイさんが居た。…もはやこれしか覚えてない。


「………昨日の事は、あんまり覚えてないです…けど、変わった事と言えば……」
「…何だ?」
「……リヴァイさんと一緒に寝たこと、くらいですかね……。」
「……。気づいちまったか」
「いや気づきますよ。ていうかそれしか思いつけませんよ。」


やっぱりそれしかないよ。あとは酔ってたとかもあるけど…これは微妙だ。


「なら、お前と寝れば俺の記憶がお前に流れ込むって事か?」
「……分かんないですけど」
「そうする事で何かヒントが得られるかもしれない、と」
「……たぶん」
「つまりお前と寝なければならない。」
「……」
「お前と一緒に寝ねぇと俺は帰れないという事か。」
「……」
「また同じベッドで毎日寝ろというのか?なぁ。オイ」
「…私に言われても!困るんですけど!私だって昨日は酔ってたからまだよかったですけど、毎日一緒に寝るとなるとそれなりに抵抗はありますよ!」
「……」
「な、何ですか、その目は…。」
「…昨日はあんなに甘えてきてたクセにな。」
「、なッ…!」
「玄関で歩けないとか言って駄々こねてたのもお前だぞ。」
「そ、そ、そん…なの……知らない…」
「仕方なく俺がベッドまで運んでやったんだが。それが平気なら寝るくらいどうって事ないだろ?お前は。」
「………リ、リヴァイ、さん…だって…」
「あ?」
「……っ私が……帰ってくるの、待ってたくせに!」
「……あぁ?何だと?」
「だって私けっこう遅く帰ったのに、確かリヴァイさん起きてましたよね?!待っててくれたんですよね?!」
「……。」
「甲斐甲斐しく私を待ってたくせにー!」
「……待ってねぇよ。勘違いするんじゃねぇ。」
「リヴァイさんこそ私に懐いてるんですから一緒に寝るくらいどうって事ないでしょー!」
「…懐いてるって何だよ」
「ハッ…そうだ…そうだよ…リヴァイさんはただの猫なんだ…そうだ、猫なんだ!同じベッドで寝るくらい普通のことなんだ…!そうだよ…!」
「(必死に思い込もうとしてやがる)」
「という事でリヴァイさん、仕方ありません!私のベッドで寝る事を許可してあげます!」
「………」
「ていうかもう……こうなったらそれしか選択肢ないですし」
「……いいのか」
「そりゃ、いいですよ。とりあえず試してみないと分からないですし…せっかく帰れる手がかりかもしれないんですから。やってみないと。」


割り切るしかない。そう思いながら紅茶を啜ると、リヴァイさんはなんとも言えない顔で私を見つめる。


「…どうしたんです?そんなに私と寝るの嫌ですか?」
「……いや…」
「仕方ないでしょう」
「…お前、さすがだな。というか割り切るのが早い」
「……はい?」
「今日から俺はお前の事をお人好し馬鹿野郎と呼ぼうと思う。」
「やめて下さいよ変なあだ名つけるの。」
「お人好しすぎんだよ、てめぇ」
「そんなこと言うなら私はリヴァイさんを刈り上げ皮肉野郎と呼びますよ?」
「はっ…」


多分、リヴァイさんなら同じベッドで寝たとしても大丈夫な気がする。そりゃあリヴァイさんは男だし、私も少しは意識してしまうかもしれないけど、でもリヴァイさんは変な事をするような人じゃない。それは分かる。だから、大丈夫だ。


「…ていうか、私、シャワー浴びてきますね。服も昨日のままだし…」
「…あぁ。」


この件は夜になるまでどうにもならなさそうなので、とりあえずシャワーを浴びにいく事にして紅茶を飲み干しカップを片付けた。





「あの、刈り上げ皮肉野郎さん」
「何だ」
「返事するんですか!?」


シャワーを浴び終え服も着替えサッパリして出てくるとリヴァイさんは筋トレをしていた。


「…リヴァイさん。」
「何だよ」


腹筋をしているその横に腰を下ろし、正座をする。


「なんか言うの遅れちゃったんですけど、昨日はありがとうございました。というかすみませんでした。」
「……。」
「面倒だったでしょう?私。」
「……別に、俺が普段世話になってる事に比べればあれくらい何でもねぇ。」
「…最近は家事全般リヴァイさんがしてくれてますけどね…」


刈り上げ皮肉野郎なリヴァイさんは、口ではいろいろ言いながらも本心はそこまで悪態をついていない事を知っている。


「お前が楽しめたんならそれでいい。」
「…ありがとうございます。リヴァイさんも早く友達に会えるよう、私頑張るので。夢で少しでも何か見れるよう気合入れて寝ます。」
「……悪いな。」
「いえ、協力できて嬉しいです。」


リヴァイさんが帰る為の何かを、今までは全然出来てなかったけどこれで少しでも役に立てたら嬉しい。


だから、頑張ろう。


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