「ミケさんにお願いがあるんですが」 「…どうした?」 「あのですね……。(ゴクリ)」 ◇ 「うわぁ、すごいすごい!」 「……」 「高いです!すごいです!あはは!」 「…そうか。」 前からお願いしたかった事をミケさんに頼んでみると、簡単に引き受けてくれた。喜び、感謝する。 「……てめぇら、何してやがる…?」 だけどそれを凄い顔をしたリヴァイ兵長に見られ、怒られた。直ちにやめろと言われた。 夢破れ、部屋に戻ってからも怒られた。 「肩車とかバカじゃねぇのか?承諾するミケも何なんだ?」 「バ、バカ!?何でですか!バカじゃないですよ夢ですよ!」 「夢…?ミケに肩車される事がか?」 「身長が高い人の目線で歩くことが、です!」 「……。そうか…バカなんだな…。」 「バカじゃないですよー!!だってミケさんってすっごく大きいじゃないですか?だからずっと羨ましいなって思ってて…」 「お前があそこまでバカでかくなったら引くぞ、俺は。」 「いやまぁミケさんは大きすぎですけど…女子としてはなりたくはないですけど…。ていうか初めてミケさん見た時大きすぎて巨人かと思いました…怖かったです……。」 「……。」 「って、そんな事は今どうでもよくて。…私たちって小さいじゃないですか?だから大きい人を見るといいなーってつい思ってしまうというか」 「お前今“たち”って言ったか?俺も含んだか?」 「あ、ごめんなさい…」 「…まぁお前の言いたい事は分かる。分かりたくねぇが、分かる。」 「……。」 「だが二度とあんなバカな事はするな。」 「………はーい…」 「何だその不満そうな顔は。」 「………だって……。楽しかったから…。」 私は小さい。めちゃくちゃ小さい。だから、ミケさんのように大きい人の目線を体験してみたかった。 「…だったら木にでも登れ。大分見晴らしがよくなるだろう。」 「そうじゃなくて!大きい人間の目線で楽しみたいんですよ!兵長も一回やってみたらどうです?見える景色が全然違いますよ!」 「するわけねぇだろ。」 「………あーあ…どうして私はこんなにも小さいんでしょうか……不公平です…。」 「……。」 あと少しでいい。せめてあと5センチでもいいから身長がほしかった。いや欲を言うならあと10センチはほしい。ていうかもういっそハンジさんくらいになってみたい。 兵長にそう言うと、俺よりでかくなるんじゃねぇと眉間にシワを寄せられた。 「私も大きくなりたいー!」 「うるせぇ黙れ。」 「……ひどい…」 「どうしたってもう身長は伸びねぇんだよ。」 「でも嫌なんです!」 「それに俺はお前はその身長のままでいいと思う。」 「な、なんでですか…!私がこんなに嘆いているのにですか…!?」 「ああ。」 兵長は真顔でそう言う。そしてその言葉に膨れていると兵長は私に近づき、いきなりぎゅっと抱き締め私を腕の中に閉じ込めた。 「……え?」 「その方が、こうしやすいだろ。」 「………。」 突然視界が悪くなる。すっぽりと兵長の腕の中へと収まってしまう私。温かい。…………うん、嬉しい。 兵長は普段あまりこういう事をしてこないくせに、ずるい。あぁ、丸め込まれる…と単純な自分がなんとなく悔しくなった。 「これでも嫌だと言うのか?」 「………嫌じゃ、ないです。」 力の抜けていた両手を兵長の背中に回し、私も抱き締め返す。 「だったらチビな事は気にするな。そしてミケにもあんな事は頼むな。」 「……分かりました。ごめんなさい」 これだけで、むしろ小さくて良かったイエーイチビ最高!とか思ってしまうのだから、兵長はすごいと思う。そして私も本当に単純だと思う。 「でも…あれは兵長も一度体験してみるべきですよ?」 「勧めてくんな。」 |