地下での話。


「なぁナマエ知ってる?!今日って、エイプリルフール?っていう日らしいぜ!」
「……なにそれ?」
「嘘ついてもいい日とかって言ってた!」
「何それどんな日よ…」
「でもファーランが言ってたし、他の奴らもそう言ってたぜ?」
「へー…」
「だからさ、兄貴になんか嘘つこうぜ!」
「しかもリヴァイに?」
「ああ!そんで驚かせようぜ!」
「…まぁ別にいいけど…どんな嘘つくの?」
「それを今から考えるんじゃん!どうする?」
「……リヴァイに嘘、ねぇ…。」
「やっぱ兄貴がすげー驚く嘘がいいよなぁ」
「リヴァイが驚くことってあるのかな」
「何の話してんだ?」
「あ、ファーラン。いや、兄貴になんか嘘つこーって話してんだけど。」
「あぁ…エイプリルフールな。さっそくかよ…しかもリヴァイに。しかもナマエも。」
「私は別に…イザベルが言い出しただけで」
「でも兄貴だし、どうやったら騙せるか分かんねーよなぁ」
「そんなの簡単だろ。」
「え?何かあるのか?」
「ああ。リヴァイなら、ナマエに好きな男が出来たとか言えばすぐ引っかかるんじゃねぇか?」
「私かよ。」
「え?!ナマエって好きな男居るのか!?」
「しかも目の前でさっそく引っかかってるし。」
「俺そんなの許さねーぞ!」
「イザベルは関係ないだろ。」
「関係あるし!俺イヤだもん!ナマエは俺のだし!」
「(何この子かわいい)…私もイザベルが好きだよ?そもそもファーランが言ったのは嘘だからね?」
「…本当か?好きな男、居ないのか?」
「居ないよ。」
「嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ。」
「リヴァイに惚れてるクセに…」
「ファーラン。何か言った?」
「……はいはい。そんな睨むなよ。」
「あれ?てか何の話してたんだっけ」
「エイプリルフールな。」
「そうだ!」
「…ていうかリヴァイを騙せる気がしないのは私だけ?」
「えーでも騙せたら面白そうじゃん…」
「そもそも嘘ついていい日って何よ。それこそ嘘じゃないの?」
「え、マジで?」
「いや嘘じゃないって。」
「嘘ついたらどうなるってのよ。」
「…ナマエ、もしかしてやりたくねーのか…?」
「………いや別にいいんだけどね。イザベルがやりたいなら。」
「お前イザベルに弱いな」
「うるさい。」
「兄貴が驚くような嘘ってどんなんかなー」
「……部屋にカビが生えたとか言えばビックリするんじゃない?」
「あ!それいい!」
「なんて些細な…」
「採用されちゃったよ。」
「それなら絶対驚くって兄貴!それにしよーぜ!」
「…うん。じゃあ帰ってきたら言ってみな?」
「おう!早く帰ってこねーかなぁ!(ソワソワ)」





「あ!兄貴帰ってきた!おかえり!」
「…ああ。(なんかやけに元気だなコイツ)」
「なぁなぁ、聞いて!さっき部屋の掃除してたんだけど、」
「…(イザベル、さっそく言うんだ。)」
「…(言いたくて仕方ないんだな。)」
「ベッドの裏にカビがびっしり生えてた!」
「…何だと…?」
「カビがびっしり!なぁ、ナマエ?」
「(っえ、私も?)…あ、うん。すごかった。ね、ファーラン。」
「(俺もかよ。)…ああ。あれはヤバイな。」
「もうさ、すっごかったぜ!」
「……なぜそんなになるまで放置した?ちゃんと取り除いたんだろうな?」
「(ていうかこれ本当なんの意味があるんだろう)」
「(しかもそんなに驚いてないな、リヴァイ。)」
「いや、気持ち悪ぃから兄貴にやってもらおうと思って放置しといた!よろしく!」
「……。」
「ッあ、いてぇよ兄貴!何すんだ!」
「自分の部屋の掃除くらい自分でしろ。」
「離して!」
「(連行されちゃったよ。)」
「(まぁそりゃあそうだろうな。)」
「カビは根本から取り除かなければアイツらはまたすぐに生えてきやがる。ナメてかかると増殖して最悪の結果になるぞ。」
「そうなのか?じゃあ兄貴が先に見てよ!」
「そんなもん見たくねぇ。」
「いいじゃねーか見るくらい!」
「何でわざわざ見なきゃなんねぇんだよ。」
「だって俺見たくねーし!」
「だってじゃねぇ。お前のベッドだろうが。お前が掃除するんだよ。」
「いいから見てってば!」
「……。」
「すごいから!カビまじですげーから!」
「……だから見たくねぇし、正直そんな部屋に立っていること自体寒気がする。」
「大丈夫だって!」
「何がだ?全く大丈夫じゃないんだが。いいからさっさと掃除しろ。終わるまで出てくんじゃねーぞ。」
「っあ、待って!待って待って!」
「…何だよ。言っておくが手伝わねぇぞ。それはお前の責任だ。」
「…まぁまぁリヴァイ。とりあえず見てやるだけでも見てやってくれよ。」
「……だからなぜ見る必要がある?」
「いいから見てやってくれよ。ほら、あんなに必死になってるんだからさ。」
「……。」
「(必死)」
「…何なんだよ…。」
「ほら見て、見て!」
「…(仕方ねぇな)」
「(わ、やっと見てくれる!)」
「(なんか俺が思ってたエイプリルフールと少し違うなぁ)」
「(チラッ)…………で、どこにカビがあるんだ」
「っふふふ、やったー!引っかかったー!」
「…は?」
「実はエイプリルフールの嘘でした!引っかかった?引っかかったよな?!」
「……。」
「よっしゃ!ナマエ、兄貴騙せたぜ!」
「あ、あぁ…うん。」
「…これは…どういう状況だ?」
「気持ちは分かるぞリヴァイ。今日はエイプリルフールだろ?だからイザベルが嘘つきたいって。」
「……。」
「良かったね、イザベル。騙せて。」
「おう!兄貴、ビックリした?」
「……ああ。お前の行動にとてつもなく驚いている。馬鹿か?」
「な、馬鹿ってなんだよ!」
「くだらねぇ事するな。やるならせめてもっとマシな嘘をつけ。」
「でも…これなら驚くんじゃねーかってナマエが…」
「お前かよ。」
「え、いや…(なんか私までスベッてるし…)」
「…なんかグダグダになっちまったな。メシでも食いに行くか。」
「おおっ、そうしよーぜ!」
「……。」
「ちょっと待って、なんか私納得いかないんだけど。リヴァイにすごい冷めた目で見られてるし。」
「え?なんで?」
「まぁ気にするなよナマエ。しょうがねぇよ。」
「……(解せぬ)」


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