君に伝えるラブソング Sheep


 二人向かい合って座っている。
 昨日公園で呼び止めて、少し話した。
 そこからまた話したいね、となって今日は喫茶店。
 違いました。ファミレスです。
 ドリンクバーが僕達を長居させる。

 今日も話は弾む。
 ずっと一緒にいて、頻繁に会って、お互いの事を何でも知っている。
 いや、違う。僕は大きな気持ちを隠している。

 君は知らないでしょ?

 学校のこと。音楽の話。昨日のバラエティー。
 次から次へと話題が出てくる。
 話の合間に冷たい緑茶をストローですすり、我に返っては葛藤する。

 伝えるって決めたじゃないか。

 どれだけの間悩んでいたんだよ。
 そして話の方向は全く肝心なところに向かない。

 隠している気持ちを伝えると決めた。
 決めたのに僕は緊張を隠すので精一杯だ。
「胸が苦しいの?」
 君は言う。隠せてすらいないじゃないか!
「ちょっと動悸ー」
 と誤魔化す病弱の特権。
 そして今日も結局言えずじまい。
 勇気を出して発した一言は、

「明日、一時に公園のブランコ。来て」

 だった。二言のような気がする。
 帰ってから僕はまた瞑想。明日こそは言うんだ。

 僕はこんなに臆病だったんだ。嫌気が差す。
 鼓舞だ鼓舞。何なら剣でも持ちたい。
 盾はない方がいいだろう。防御より攻撃を考えるんだ。
 僕だって男なんだ!
 いや、僕なんて言ってるからいけないのだろうか。
 俺も男だ! 戦場に行くんだ!

 気持ちが高ぶって、なかなかその夜は寝付けなかった。

 翌日。
 取り敢えず見た目から入ろうと、僕じゃなくて俺は頑張っている。
 髪もセットして。服を選んで。
 まだ気持ちを奮い立たせている。
「そんなにはしゃいでどうしたの。咳が出るよ」
 母さんに言われるけど、それどころじゃない!
 鏡を見つめて最終確認、いざ出発。

 ものの数分で辿り着く公園。
 僕は、じゃなくて俺はブランコの前に立つ。
 当たって砕けろ。
 咲き誇って散れ。
 負けたってもう構わない。決めたもん。

 もう迷わないよ。

 君は時間通りにやってきた。
 キョロキョロと公園を見回す。
 僕……じゃなくて、もう僕でもいいや。
 僕はそんな君の名前を呼ぶ。
「遥香ー!」
 君はこちらを向いて、
「ヤッホー奏太!」
 と名前を呼びながら駆け寄ってくる。
 そして二言三言言葉を交わす。
 少しの間があって、僕は目線を落とす。
 そしてぐっと顔を上げて君の目を見る。

 それからのことはしっかり覚えている。
 なのに非現実的だった。
 とてもありふれていて、僕には非現実的だった。

「君が好き」

 単純ながら、どこまでも大きな意味を持つ。

「私も」

 この笑顔が大好きだ。
 腕の中にしっかり抱きとめたい。


 あなたのことを心から愛し続けます。


song by ポルノグラフィティ 黄昏ロマンス Sheep 〜Song of teenage love soldier〜



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