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「じゃあ、おやすみ。」
「……………………あぁ。」

男同士が一つのベッドって、正直どうかと思う。

友達の家泊まりに行った時に雑魚寝したことはあるけど、それはもっと大人数の話で二人っきりで同じベッドって何か変だ。

何でこうなったか、ぼんやり考え始めた。

「もう寝ちゃうの?」
「寝る!!」

キスの後に無性にイライラして、風呂を借りた後はすぐに名前(男)の寝室に行った。
前に名前(男)の家に泊まった時は客人用の布団があって、それに寝ていた。
しかし。

「……布団は?」
「無くした。」
「ふーんそっか、……ってんなわけねぇだろバカか!どうしたらあんなでかいモン無くすんだよ!」
「捨てた。」
「何で?!」
「…壊れた。」
「布団に壊れたって表現使う奴初めて見たわ。」
「俺のベッドセミダブルだよ。」
「だから何だよ!!一緒に寝るのか?!」
「ダメ?」
「…………普通に考えてダメだろ。」
「何で?」
「何でって……、……。」
「何もしないから。」
「その発言がアウト!!」
「別に減るもんじゃないし。」
「大切なものを失う気がする。」
「……赤也は俺のこと、信用してないの?」
「う………、」
「…じゃあ、俺床で寝るよ。」
「……し、仕方ねーな!!」

そして今に至るってわけだ。
名前(男)のしょぼんとした顔に何でか罪悪感を感じた。くっそー甘いぜ俺……。
いや名前(男)が俺を襲ってくるって思ってるわけじゃないけどさ、ホラなんかアレじゃん。名前(男)にしてみたら付き合う前の男女が一つのベッドで寝てるようなもんで、あれ、この場合どっちが男でどっちが女なのかな。……ってんなことどうでもいいだろうが!!
つーかよく考えたら完全に流されてるじゃん!キスの時といい今回といい、俺って案外押しに弱いのかもしれない。

「ん……赤也、もう寝たの?」
「………!」

目を閉じて静かにしてたせいか、名前(男)は俺が寝たのかと思ったらしい。

「…………。」
「……………。」

物凄い視線を感じたけど目を開けたら負けだ、と思って寝たフリをした。

「…………。」

じぃぃぃぃぃー。
効果音をつけるなら、こんな感じだと思う。視線って痛いんだな!!

あまりにも息が詰まるので名前(男)に背を向ける形で寝返りを打った。

……バレてない、よな?

その後も何分か沈黙が続いたけど、急に名前(男)が動いた。

ギュッ。

って感じに後ろから抱き締められた。名前(男)に背を向けて横に寝ていた俺の脇から両腕を入れて、胸のあたりでぎゅうっとされてる状態だ。

頭の中では冷静に整理出来たけど、実際かなりパニックになっていた。

え、ちょっと、落ち着け。何で抱き締められてんだ。

「……赤也、すき。」

耳元で囁かれて、足を擦り寄せられた。

心臓が爆発しそうなくらいドキドキして、寝たフリがバレるかと思った。

それでも意地で寝たフリを続けていると、名前(男)の手が不穏な動きを見せた。

胸に添えられていた手がワサワサと動いている。くすぐったい。そのままツツッと片手が腹の上をなぞった。

「…ッ!!!」

思わず声が出そうになった。
何つうか、触り方がえろい。

そのまま腹に下りた手が、俺のズボンの中に入ってきて、

「ってちょっと待て!!!お前何もしないって!!!」
「あ、やっぱ起きてたの?」
「…は?」
「赤也さ、狸寝入り下手過ぎ。」

名前(男)はクスクス笑いながらそう言った。

「お前、気付いてたの?」
「うん。赤也って寝てる時もっとすーすー呼吸音がするんだよね。さっきのはちょっと静か過ぎかな。」
「……何で知ってんだよ。」

俺でも知らないことを。

「前寝てた時に気付いた。」
「あ、…そう。」

それでも俺は本気で身の危険を感じたからな?!お前に襲われるかと思ったんだぞ?!

抗議の眼差しで見ていると名前(男)は笑いながらごめんごめんと謝った。

「赤也が泊まりに来たいって言ってくれたから、俺浮かれてるのかも。」
「……え?」
「あんまり俺から誘って引かれたら嫌だなって思ってたから、今日はちょっと浮かれてる。」

もうしないから、機嫌治して?

あまりにまっすぐ言われるとどうしたらいいかわかんなくなる。

「……もうすんなよ?」
「うん。おやすみ。」

もう一度横になると今度は名前(男)に手を握られた。

「お、オイお前!」
「これだけだから。」

大切そうに俺の手を両手で包み込まれて何も言えなくなった。

「…………。」


それから何時間経ったのか、時間の感覚が鈍っててよくわかんない。
名前(男)に繋がれた手が熱い。あまりに熱くて、眠れないんだ。

名前(男)はとっくに寝ていたけど、俺の手は握り締めたまま。じっとりと汗を掻いた俺の手から名前(男)の温度がじわじわと伝わってきた。

「……赤也、すき。」

耳元で囁かれた名前(男)の言葉が頭の中を何回もぐるぐる駆け巡っていた。


End







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