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わけわかんねぇ。
仲良くするのやめる、ってどういうことだ。
つか仲良くするのってやめるやめないっていう問題じゃないだろ。
名前(男)の言ったことが理解できずに苛立った。
その日、HRが終わると名前(男)はさっさと帰宅した。
…別に、今日は約束をしていたわけじゃない。
それなのにさっきの一言とあいまってなんだか寂しかった。
明日、明日問い詰めてやる。
そう思って部活に向かった。
「赤也、今日も調子悪いな。」
「そんなことないっスよ!」
「何だ?振られたか?」
「振られてねぇっす!」
っていうかまず彼女とかそういうのいねぇし!
その誤解を解く努力をするのすらめんどうくさかったのでもう言わせておくことにした。
「イライラしているな。」
「してないっす。」
「細かいミスが多いぞ。」
「わかってます!」
「お前は相変わらず感情のコントロールが下手だな。」
「……。」
「今日はもうこれ以上いても練習にならないだろう。外周をしたら帰ったほうがいい。」「柳先輩!俺は…、」
「弦一郎と精市には俺から行っておこう。集中できていない練習は怪我のもとだ。」
「…スイマセン。」
「謝るくらいなら明日までに何とかしろ。」
「……ッス。」
そんでそのまま帰らされた。
ムカつく。これも全部名前(男)のせいだ。
そう思って家に向かって歩いていると、途中で名前(男)の家を見つけた。
……突撃してやる。
いきなり家に来られたら迷惑だとかわかってる。
でもイライラが収まらないんだから仕方ないだろう。
「…で、どうして来たの。部活は?」
「帰れって言われた。」
「…何しに来たの?」
「仲良くするのやめるってどういうことだよ。」
「そのまんまの意味だよ。」
「ハァ?!意味わかんねー!さっきまで普通だったじゃんかよ!」
「………。」
「…何か言えよ。」
「別に、赤也は俺と仲良くする必要無いじゃん。」
「必要あるとか無いとか関係ねーだろ。」
「俺はさ……、………嬉しかったよそりゃ。でも俺もうダメ。」
「何が?いきなりわけわかんねー。説明くらいしろよ。」
「……俺さ、女のコダメなんだ。」
「…は?」
「だから、女のコ好きになれないんだよ。」
ちっさい頃に母親が浮気した。その現場見せつけられて女って生き物が怖くなった。仲良かった女のコに告白されて断ったら次の日から無視された。塾行ってた時に女の先生の家連れ込まれかけた。んで、気付いたら女がダメになってた。
元々そっちの気があったのかもしれないけど、今はホントに男しか好きになれない。
「…お前何だかいい奴だし、普通に友達になれるかなって思ったけど、俺このままだとお前のこと好きになりそう。だからもう仲良くするのやめよう。」
けっこう重たいカミングアウトだった。
「えーっと………、」
「気持ち悪いだろ?だからもういいよ。」
「別にそんなこと…。」
「そうやって気遣ってくれるとこも嬉しいけどさ、実際きついじゃん。お前も俺も。」
確かに、けっこうきつい。
だってコイツ男だし、俺も男だし。
完全にノーマルな俺はそういう世界があるなんて考えたことも無かった。
でも、俺はコイツと仲良くしたい。
だってコイツいい奴だし、案外面白いし、何かほっとけねーし。
「俺はお前と仲良くしたいけど……、」
「…それは俺がきつい。」
「だよなぁ。」
「赤也は俺を好きにはなれないでしょ?」
「…多分。そういうの考えたこともねーし。」
「…そうだよね。」
「で、でもホラ、お前イケメンだし!他にいくらでも、」
「……。」
目に見えてしゅんとする名前(男)にこっちの心まで痛む。
あー、どうすればいいんだよ!!
……そういえば、前に仁王先輩が言ってた気がする。
『仁王先輩って知らない人が告白してきたらどうします?』
『人によるの。』
『えーっと、付き合う付き合わないはどうやって決めます?』
『そうじゃのう…その人とキス出来るって思えれば付き合ってみるかの。』
………キス、ねぇ。コイツと。男同士かよ。
『赤也、好き。』
『俺も……』
…………
…………無い、かなぁ…。
……………。
「赤也?」
「お前、俺とキス出来る?」
「えぇ!?」
「出来る、か?」
「で、出来る、けど。」
「マジで?!」
「……多分。」
「…うーん、じゃあしてみる?」
「何で?!」
「いや…何となく。」
「…いいの?」
「あぁ。」
何で自分がこんなこと言ってるかわかんねー。
でも不思議と悪い気はしなかった。
名前(男)の顔がどんどん近づいてきて、それで、
End