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結局あの後も練習にはあまり打ち込めなくって、何回か怒られた。
あーもう、何で俺ソワソワしてるんだよ!
「じゃーお先ッス!」
「おーお疲れ。」
「気をつけて帰れよー!」
「あ、赤也今日寄り道してかねぇ?」
「あースミマセン今日約束があって…。」
「何だよ、女か?」
「ち、がいますよ!じゃーさよーなら!」
部活が終わってバタバタと俺が出ていった後で、
「…女じゃな。」
「だから今日上の空だったのか。」
「赤也も隅に置けんのう。」
なんて会話がされていたことを俺は知らない。
すぐに名前(男)のとこに行くと、名前(男)は教室の自分の席に座って本を読んでいた。
薄暗い教室で本を読む名前(男)は一枚の絵みたいで、声をかけるのを少し躊躇った。
「…あれ赤也、来てたんだ。」
少しして名前(男)は俺に気付いたらしい。
…え、俺いまコイツに見とれてたのか。
「あー…お待たせ。行くか?」
「うん。」
名前(男)は読みかけの本をカバンにしまって立ち上がった。
「今日も飯食い行く?」
「あー…行きたい。都合大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。」
名前(男)が俺と食いたいって意思表示してくれたのが何だか嬉しい。
ゲーセンにて。
名前(男)の好きなキャラが山積みにされてるUFOキャッチャーまで案内した。
「ホラ、このぬいぐるみ。」
「…ホントだ。」
…何で目をキラキラさせてんだ名前(男)!
「多分これなら一発で取れるな。」
「え、凄い。」
「取ってやろーか?」
「うん。俺こういうのやったことないんだ。」
「あー、それっぽい。こういうの超苦手そう。」
「何それ!酷いな。」
思わずツレと一緒にいる時のノリで話すと、名前(男)は笑った。
………え。
軽口が叩ける自分にもびっくりしたけど、それよりさぁ!!
……名前(男)が、笑った…?!
今までも少し口角がちょっと上がってるような笑い方はしてたけど、目を細めて口を開けて笑うとか初めてだと思う。
えー、こいつ笑えるの?!
「…なに?」
「わり、なんでもねー。じゃ取るわ。」
だから思わず凝視したのも仕方ないと思います。
だってコイツ、すっげー綺麗に笑うんだもん。
UFOキャッチャーのクレーンの力はかなり弱いから、転がして落とすかタグの部分にひっかけて持ち上げるかしないとなかなか取れない。
コツ掴むまでが大変だけど、…ま、俺には簡単なことなんだよね。
宣言(?)通り一発で取って名前(男)に渡す。
「ありがとう。」
「いいってことよ。…つかさ、お前ぬいぐるみとかどうすんの?」
「ベッドのとこに置いてる。」
「一緒に寝てるのか?」
「さすがにそこまではしないけど抱き枕あったら欲しいな。」
……何だかまた名前(男)の意外な一面を見た気がする。
「またファミレスでいい?」
「うん。」
ゲーセンから出た後で、そう言ってファミレスまで行こうとしたら名前(男)の足が止まった。
「ん、どうした?」
「…俺ん家来ない?」
「はぁ?何でまた急に。」
「今日『生き物大図鑑』がパンダ特集だったんだけど、録画するの忘れてた。」
「あー、そうですか……。」
テレビかよ!とツッコミを入れたくなったが踏みとどまった。
コイツやっぱ変な奴だ!
「じゃあ今日はもう帰るか?」
「ダメ。帰らないで。…一人で飯食うの、嫌なんだ。」
そう言われると断れない。
「お前断りづらい言い方するなよ…。」
「だって、嫌だし。」
「まぁ行ってやってもいいけど?」
「じゃあ前言ってたバンドのDVDも見よう。赤也持ってないって言ってたやつ。」
「よし行くか!」
さらに断る理由も無くなったので、俺は名前(男)の家にお邪魔することにした。
End